【収益認識基準】-注記- 当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報
当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報
「収益認識に関する開示及び注記」について概要を下記エントリーで解説しました。
そして、収益認識の注記の要素である「収益の分解情報」と「収益を理解するための基礎となる情報」について解説したエントリーがこちらになります。
今回は残りの1つである、「当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報」について解説したいと思います。
–収益認識に関する注記事項-
(1) 収益の分解情報
(2) 収益を理解するための基礎となる情報
(3) 当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報
当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報とは
「当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報」は大きく以下の2つにわかれます。
「当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報」は大きく分けると以下の2つ
・契約資産及び契約負債の残高等
・残存履行義務に配分した取引価格
以下、それぞれ詳しく見ていきたいと思いますが、いずれも土台として「当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報」である点を頭に入れて確認していきましょう。
契約資産及び契約負債の残高等
「契約資産及び契約負債の残高等」とは具体的に、履行義務の充足とキャッシュ・フローの関係を理解できるようにするため、次の事項を注記することが求められています(赤字は当ブログで加筆)。
(1) 顧客との契約から生じた債権、契約資産及び契約負債の期首残高及び期末残高(区分して表示していない場合)
(2) 当期に認識した収益の額のうち期首現在の契約負債残高に含まれていた額
(3) 当期中の契約資産及び契約負債の残高の重要な変動がある場合のその内容
(4) 履行義務の充足の時期が通常の支払時期にどのように関連するのか並びにそれらの要因が契約資産及び契約負債の残高に与える影響の説明また、過去の期間に充足(又は部分的に充足)した履行義務から、当期に認識した収益(例えば、取引価格の変動)がある場合には、当該金額を注記する。
PL(収益)とBS(債権・契約資産・契約負債)の金額は密接に結びついて連動しますが、財務諸表の利用者がその関係をより詳しく理解できるようにするための注が求められていることがわかります。
それがひいては当期及び翌期以降の収益の金額を理解するのに資することになります。
残存履行義務に配分した取引価格
「残存履行義務に配分した取引価格」とは具体的に、既存の契約から翌期以降に認識することが見込まれる収益の金額及び時期について理解できるようにするために、残存履行義務に関して次の事項を注記することが求められています。
(1) 当期末時点で未充足(又は部分的に未充足)の履行義務に配分した取引価格の総額
(2) (1)に従って注記した金額を、企業がいつ収益として認識すると見込んでいるのか、次のいずれかの方法により注記する。
① 残存履行義務の残存期間に最も適した期間による定量的情報を使用した方法
② 定性的情報を使用した方法
これらは、まだ履行されていない履行義務にいくら金額が配分されたかを知ることにより、(当期以前の契約から)翌期以降でいつ、どの程度の収益が生じるかを理解するのに役立つ注記を行うのが主旨だということがわかります。
なお、いくつかの条件下では上記の注記に含めないことが認められている事項があります。
ただし含めない場合には、その条件と履行義務の内容を注記する必要がある点等、注意が必要です(企業会計基準第 29 号80-23,24項)。
その条件が企業会計基準第 29 号80-22項に以下のように記載されています。
(1) 履行義務が、当初に予想される契約期間が 1 年以内の契約の一部である。
(2) 履行義務の充足から生じる収益を適用指針第 19 項に従って認識している。
(3) 次のいずれかの条件を満たす変動対価である。
① 売上高又は使用量に基づくロイヤルティ
② 第 72 項の要件に従って、完全に未充足の履行義務に従って識別された単一の履行義務に含まれる 1 つの別個の財又はサービスのうち、完全に未充足の財又はサービス)に配分される変動対価
「残存履行義務に配分した取引価格」に関する注記は上記からもわかるように、注記が必要な場合には基準をしっかり読み込む必要がある場合が想定されます。
特に収益に売上高又は使用量に基づくロイヤルティがある場合や、変動対価を含む場合にはどのような注記が必要になるか慎重な検討が求められます。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。