【収益認識基準】-注記- 収益を理解するための基礎となる情報
収益を理解するための基礎となる情報
「収益認識に関する開示及び注記」について概要を下記エントリーで解説しました。
そして、収益認識の注記の要素の1つである「収益の分解情報」について前回解説したエントリーがこちらになります。
では、今回は下記の3つの注記項目のうち、「収益を理解するための基礎となる情報」についてできる限りわかりやすく解説します。
少々長くなりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
-収益認識に関する注記事項-
(1) 収益の分解情報
(2) 収益を理解するための基礎となる情報
(3) 当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報
収益を理解するための基礎となる情報とは
企業会計基準第 29 号80-12項から、「収益を理解するための基礎となる情報」とは
顧客との契約が、財務諸表に表示している項目又は収益認識に関する注記における他の注記事項とどのように関連しているのかを示す基礎となる情報
であると読み取れますが、非常にわかりにくい表現なので、ここでは「収益を理解するための基礎となる情報」とは具体的にどんな情報なのかを見ていきます。
企業会計基準第 29 号80-12項には下記の5つの情報が掲記されています。
(1) 契約及び履行義務に関する情報
(2) 取引価格の算定に関する情報
(3) 履行義務への配分額の算定に関する情報
(4) 履行義務の充足時点に関する情報
(5) 本会計基準の適用における重要な判断
「収益を理解するための基礎となる情報」とは、以下の5つ!
(1) 契約及び履行義務に関する情報
(2) 取引価格の算定に関する情報
(3) 履行義務への配分額の算定に関する情報
(4) 履行義務の充足時点に関する情報
(5) 本会計基準の適用における重要な判断
では1つ1つ確認していきましょう。
(1) 契約及び履行義務に関する情報
「契約及び履行義務に関する情報」とは、収益として認識する項目がどんな契約から発生しているかを理解するための情報を注記することを求めています。
これには以下の2つの事項を含みます。
(1) 履行義務に関する情報
(2) 重要な支払条件に関する情報
(1)の履行義務に関する情報については、文字通り、企業がどのような履行義務を負っているか、財務諸表利用者が理解できるような情報を注記するとともに、例えば、企業が他の当事者の代理人として行動する場合や、返品・返金等の義務、財やサービスに対する保証等が含まれている場合にはこれらの情報も注記します。
(2)の重要な支払条件に関する情報については、例えば、通常の支払期限や変動対価含まれる場合にその内容、重要な金融要素が含まれる場合にその内容等を注記することが例示されています。
(2) 取引価格の算定に関する情報
「取引価格の算定に関する情報」とは、取引価格について理解できるように、取引価格の算定に使用した見積方法やインプット、仮定に関する情報を注記することが求められています。
企業会計基準第 29 号80-16項には具体例として以下の5項目が挙げられています。
(1) 変動対価の算定
(2) 変動対価の見積りが第 54 項に従って制限される場合のその評価
(3) 契約に重要な金融要素が含まれる場合の対価の額に含まれる金利相当分の調整
(4) 現金以外の対価の算定
(5) 返品、返金及びその他の類似の義務の算定
※(2)の第54項の説明は細かい論点になるため詳細な説明は割愛します。
取引価格に、変動対価がある企業や金融要素が含まれる場合等には注記が必要になるので慎重な検討が必要です。
特に値引き、リベート、返金、インセンティブ、割増金、ペナルティー、返品権利付販売等の変動対価が見受けられる業界や債権の回収に時間を要し金利が生じる業界(製造業、卸売業、建設業等)は注意しましょう。
(3) 履行義務への配分額の算定に関する情報
「履行義務への配分額の算定に関する情報」とは、取引価格の履行義務への配分額の算定方法について理解できるように、取引価格の算定に使用した見積方法やインプット、仮定に関する情報を注記することが求められています。
企業会計基準第 29 号80-17項には具体例として以下の2項目が挙げられています。
(1) 約束した財又はサービスの独立販売価格の見積り
(2) 契約の特定の部分に値引きや変動対価の配分を行っている場合の取引価格の配分
(4) 履行義務の充足時点に関する情報
「履行義務の充足時点に関する情報」とは、履行義務を充足する通常の時点、すなわち収益を認識する時点の判断及び当該時点における会計処理の方法を理解できるように注記をすることが求められています。
企業会計基準第 29 号80-18項では、以下の3項目が限定列挙されています。
(1) 履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)
(2) 一定の期間にわたり充足される履行義務について、収益を認識するために使用した方法及び当該方法が財又はサービスの移転の忠実な描写となる根拠
(3) 一時点で充足される履行義務について、約束した財又はサービスに対する支配を顧客が獲得した時点を評価する際に行った重要な判断
(5) 本会計基準の適用における重要な判断
「本会計基準の適用における重要な判断」とは、収益認識基準を適用する際の判断や変更のうち、収益の金額及び時期の決定に重要な影響を及ぼす事項を注記することが求められています。
本項においては特段の事例などは紹介されていませんが、各企業において収益認識に重要な影響を与えると思われるものの有無を検討することが必要であり、適切に注記することが求められます。
最後に
注記事項の詳細については今回の収益認識基準の改正で定められたため、まだ実際に開示された事例は多くないと思われます。
今回の改正を受けて2021年3月期からは多くの早期適用企業で詳細な注記がなされると想定されますので、強制適用となる2021年4月1日以降から適用をする企業におかれては今後の開示事例が待たれます。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。