概念フレームワークとは
概念フレームワークとは?
企業会計の基礎となる前提や概念を体系化したものであり、首尾一貫した会計基準を導くために、財務報告報告の目的や基本的な考え方をとりまとめた体系とされています。
これは、資産や負債などの重要概念を設定し、そこから演繹的に個々の会計基準を開発していく方針を導出する、という目的を有するものです。
演繹とは・・・ 諸前提から論理の規則にしたがって必然的に結論を導き出すこと。普通、一般的原理から特殊な原理や事実を導くことをいう。演繹的推理。
帰納とは・・・個々の特殊な事実や命題の集まりからそこに共通する性質や関係を取り出し、一般的な命題や法則を導き出すこと。
三省堂 大辞林 第三版
概念フレームワークの歴史
米国
概念フレームワークは、1970年代に、FASB(財務会計基準審議会※アメリカの機関)によって初めて導入されました。
EU
IASB(国際会計基準審議会※ロンドンに所在する機関であり、IFRSの作成を行っている)においては1989年に承認された「財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク」を2001年に採用しました。
その後2010年と2018年に改正が行なわれています。
なお、2010年の改訂は、IASBとFASBの共同で行われましたが、2012年以降はIASBの単独で見直し再開し、2018年の改正はIASBの単独により行われました。
日本
日本においては、2004年に基本概念ワーキング・グループから、2006年にASBJ(企業会計基準委員会※日本の機関)から討議資料として、「財務会計の概念フレームワーク」が公表されました。
討議資料として公表された背景として、
なお、公表にあたっては、現在、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)との間で、共通の概念フレームワークを開発するための共同プロジェクトが進行中であるため、公開草案という形ではなく、改めて討議資料として公表しております。
と、ASBJのホームぺージに記されています。
日本において概念フレームワークが設定された背景には、「企業会計原則」の問題点に対応する目的があります。
というのも、日本の企業会計原則は企業会計の実務慣行のなかから一般に公正妥当と認められたところを要約するという帰納的アプローチに基づいていました。
しかし帰納的アプローチでは現状の会計実務に対応することが難しく、また新しい会計事象に対応することができないという問題が生じました。
また会計実務に対応する形で形成されたため、会計基準全体で整合性・首尾一貫性が担保されない可能性も問題視されたことがあります。
こういった状況に対応するため、演繹的アプローチによって会計基準を開発・作成することを目的として「財務会計の概念フレームワーク」が公表されました。
日本の「財務会計の概念フレームワーク」については以下のリンク先を参照。
日本の「財務会計の概念フレームワーク」について
「財務会計の概念フレームワーク」の内容の詳細については、上記のリンク先を参照して頂ければと思いますが、最後に、ここでは簡単にどのような構成になっているいかを記載しておきます。
前文
第1章 財務報告の目的
第2章 会計情報の質的特性
第3章 財務諸表の構成要素
第4章 財務諸表における認識と測定
という構成になっており、それぞれの章の最後に結論の根拠と背景説明が記載されています。
前文に「概念フレームワーク役割」が記載されており、
概念フレームワークは(中略)会計基準の概念的な基礎を提供するものであり、(中略)財務諸表の利用者に資するものであり、利用者が会計基準を解釈する際に無用のコストが生じることを避けるという効果も有する
とあることからもわかるように、会計に携わるものには有用な情報を提供してくれるものとなっています。
IASBの「財務報告のための概念フレームワーク」について
上述したとおり、IASBは2018年に概念フレームワークを改訂しました。
改定後のIASBの概念フレームワークの構成は、
「概念フレームワーク」の地位と目的
第1章 一般目的財務報告の目的
第2章 有用な財務情報の質的特性
第3章 財務諸表と報告企業
第4章 財務諸表の構成要素
第5章 認識と認識の中止
第6章 測定
第7章 表示と開示
第8章 資本と資本維持の概念
となっています。
IASBが定める概念フレームワークの目的は
◇ IASBが首尾一貫した概念に基づいたIFRS基準の開発を行うのを支援する
◇ 特定の取引または他の事象に当てはまるIFRS基準がない場合、またはIFRS基準が会計処理の選択を認めている場合に、作成者が首尾一貫した会計方針を策定するのを支援する
◇ すべての関係者がIFRS基準を理解し解釈するのを支援する
の3つが挙げられています。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。