会計のこと

IAS第16号 有形固定資産 原価モデルと再評価モデル

IAS第16号 有形固定資産 原価モデルと再評価モデル

当初認識後の測定

日本基準では、当初認識後の測定は原則、原価モデルしか認められていませんが、国際会計基準では原価モデルと合わせて再評価モデルも認められています。

 

原価モデルとは?

原価モデルという言葉はIFRSを採用していないと聞き馴染みがないかもしれませんが、原価モデルとは

取得原価から減価償却累計額と減損損累計額を控除した額を帳簿価額とする方法

を言います。

 

つまり、日本の会計基準で一般的に行っている評価方法ですね。

再評価モデルとは?

一方、国際会計基準で認められている再評価モデルとは

固定資産の帳簿価額を定期的に公正価値で再評価する方法

を言います。

 

再評価モデルを採用した場合にあっても、原価モデルによった場合の帳簿価額を開示する必要があります。

また、同一区分の資産すべてに採用することを条件に認められている点にも注意が必要です。

 

 

評価益を計上する場合

再評価の結果、評価差益を計上する場合、この評価差額は「再評価剰余金」としてその他の包括利益に計上します。

ただし、後述する評価損を過去に計上していた場合には、その範囲内でPLに評価利益を計上します。

 

 

評価損を計上する場合

再評価の結果、評価差損を計上する場合、この評価差額はPLに評価損失を計上します。

ただし、上述した「再評価剰余金」を過去に計上した場合には、その計上範囲内で「再評価剰余金」を取り崩す処理を行います。

再評価モデルの有用性

再評価モデルを採用している企業はほとんどないように思われます、特に日本企業においては。

 

それは上述したように、再評価モデルを採用した場合でも、原価モデルによった場合の簿価を開示する必要があるため、実務上のデメリットが大きいためです。

 

しかし、であればなぜ再評価モデルが容認されたのでしょうか?

 

こちらは私見ですが、IFRSの基本的な考え方として「資産負債アプローチ」を採用していること(BS重視)、経営者の恣意性を排除するために公正価値会計へのシフト、概念フレームワークの基本的な質的特性である「忠実な表現」の考え方に照らすと「再評価モデル」が否定される余地がないためではないでしょうか。

会計上の考え方に照らすと否定するロジックが特段ないため容認されているが、実務上のメリットがなく、投資家からの強い要請もないため採用する企業が少ない、と推察します。

 

実際、BS上の開示で再評価モデルが採用されると他社との比較可能性が損なわれるのではないかと思います。

だからこそ、「原価モデルによった場合の簿価を開示する必要」があるのでしょう。

 

IAS第38号 無形資産

なお、IAS第38号 無形資産でも同様の規定が設けられています。

原価モデル及び再評価モデルについて、いずれもIAS第16号 有形固定資産と同じように認められています。



※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。 



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