IFRS第9号「金融商品」
IFRS第9号の「金融商品」について、論点は色々あるのですが、今日はFVTOCIについて。
ちなみにFVOCIと表記する場合もあるようですが、どちらも同じものです。
金融商品の分類
ちなみにIFRSの金融商品の前提として有価証券等の金融商品を計上する場合、
①純損益を通じて公正価値で測定する金融資産(FVTPL)
②その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産(FVTOCI)
③償却原価で測定する金融資産
のいずれかに分類されます。
上述の通り、FVTOCIとはFinancial assets at fair value through other comprehensive incomeの略で、「その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産」のことを言います。
記載の通り、その他の包括利益を通じて公正価値(≒時価)を測定するため、当期純利益に影響を与えません。それは減損しても、売却しても同じです。
日本基準でいうところのその他有価証券を思い浮かべるところですが、実際の会計処理を見ると違いがわかりやすいと思います。
FVTOCIに分類された場合の仕訳(3月決算)
××年3月31日時点
××年1月1日に株式を取得価額500円で取得し、××年3月31日に時価が240円となった場合、
日本基準
有価証券評価損 260 / 投資有価証券 260
IFRS
有価証券評価損(OCI) 260 / 投資有価証券 260
OCI・・・その他の包括利益
となり、日本基準の場合、その他有価証券であっても時価が大幅に下落しているため評価損を計上します。
一方IFRSではFVTOCIに分類された場合には、その名の通りその他の包括利益として評価差額を認識します。包括利益としては認識されますが、純損益としては認識されないわけです。
××+1年3月31日時点
××年3月31日に時価が240円と評価された翌年度、××+1年3月31日に時価が340円となった場合、
日本基準
投資有価証券 100 / 有価証券評価差額金 100
IFRS
投資有価証券 100 / 有価証券評価益(OCI) 100
ここは特にひねりもなく、わかりやすいかと思います。
××+2年3月31日時点
××+1年3月31日に時価が340円となった翌年度の××+1年9月30日に時価400円で売却した場合、
日本基準
有価証券評価差額金 100 / 投資有価証券 100
(この振替仕訳は通常期首時点で行われますが、便宜上記載しています)
CASH 400 / 投資有価証券 240
/ 投資有価証券売却益 160
IFRS
投資有価証券 60 / 有価証券評価益(OCI) 60
となります。IFRSの場合には、一貫してOCI(その他の包括利益)として評価差額や売却差額を認識し続けます。したがって、BS上では有価証券にかかる差額はこのままだと利益剰余金として計上されずにその他の包括利益(その他の資本の構成要素)として計上され続けます。
FVTOCIの株式はリサイクリングが禁止されている
IFRSでFVTOCI処理された資本性金融商品(株式)にかかるその他の包括利益の場合、リサイクリングは禁止されているため、純損益として認識されることはありません。そのため、何もしなければ上述のようにその他の包括利益(その他の資本の構成要素)として計上され続けますが、IFRSではその他の包括利益について資本の中で振り替えることが認められており、通常、認識の中止の時点(≒売却時点)や、公正価値の著しい下落時点(≒減損した時点)で利益剰余金に振り替える処理が実務上は行われています。この時、会計方針または金融商品に関する注記において、振替を行う旨記載することが一般的となっています。
FVTOCIの株式はリサイクリング禁止・債権はリサイクリング実施
ーーー【追記】金融資産の分類については以下の記事をご覧くださいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
補足-在外子会社がIFRSを採用している日本企業の連結決算-
なお、日本基準を採用している企業の連結決算において、在外子会社にFVTOCIに分類される金融商品がある場合、金額的重要性がない場合を除いて修正が必要になるので注意が必要です。
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※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。