減価償却について
減価償却とは
減価償却についてのGAAP差異をまとめようかと思ったのですが、その前に減価償却そのものについておさらいしようと思います。
会計に携わっている者であれば当たり前のように減価償却という概念に触れていると思いますが、ここでは改めて基本に立ち返ってみたいと思います。
Wikipediaによれば、
減価償却(げんかしょうきゃく、英: Depreciation)とは、企業会計に関する購入費用の認識と計算の方法のひとつである。長期間にわたって使用される固定資産の取得(設備投資)に要した支出を、その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続きである。英語で有形固定資産にかかるものをdepreciation、無形固定資産にかかるものをamortization という。
とあります。
定義についてはご存知の通り、といったところでしょうか。
イメージはこんな感じです。
定額法と定率法
減価償却方法には大きく2通りあります。
細かく言うと他にもありますが、多くの会社では以下の2通りのパターンで減価償却を行っています。
定額法
定額法とは
定額法(Straight-Line method, SL)は、毎年一定の額を償却してゆく償却法。
とあります。
再掲)
上記のイメージ図がまさにこの「定額法」です。
費用は通常発生した期間に計上しますが、金額の大きい資産を購入した場合、数年、あるいは数十年にわたって使い続けるので、その使用期間にわたって毎年同額を計上し続けるのが定額法となります。
定率法
定率法とは
定率法は、毎年その期首の未償却残高に対して一定の率を償却してゆく償却法であり、加速度的減価償却法の一つである。
とあります。
これをイメージで表すと、
このようになります。
2つの方法による減価償却費の違い
定額法と定率法のイメージ図を並べてみてましょう。 (耐用年数5年の場合)1年目と2年目は定率法の方が減価償却費が大きくなりますが、3年目以降は定額法の方が大きくなっています。
これを折れ線グラフで見るとこうなります。
考え方の違い
定額法と定率法は、それぞれ論拠とする考え方があって異なる償却方法を取っています。
定額法の考え方
定額法はある資産を特定の期間にわたって使用する場合、その期間にわたって得られる効用に差はない、という考えにより毎期同額を償却します。
資産によっては修繕費等が発生する可能性があり、それは耐用年数間近になればなるほど発生する可能性が高いため、後半になるほど費用負担が増える可能性が高いと言われています。
定率法の考え方
定率法は上述した修繕費も含めて耐用年数期間の費用計上を平準化する、という考え方に基づいています。
と、文章にしてみると正論のように聞こえますが実務に照らしてみるとなかなか無理のある考え方です。
表向きにはこのような考え方と言いつつ、税務メリットが大きいというのが本音のような気もします。
ここで考え方を確認したのは、IFRSを採用している多くの企業ではすべての固定資産に対して「定額法」を採用しているからです。
IFRSで定率法が認められていないわけではありませんが、実態に即した償却方法として定率法を採用するのに納得のいく説明をするのが難しいからと言われています。
GAAP差異についての詳細は以下を参照ください。
会計上の注意点
税法上は、以下のルールの範囲内であれば、申請した方法で償却することが可能ですが、会計上は原則として「実態に即した」償却方法を採用する必要があります。
また企業会計原則の一般原則に「継続性の原則」があるため、コロコロと償却方法を変えることもできない点にも注意が必要です(償却方法をかえることにより利益操作等が可能となる恐れがあること。また比較可能性が損なわれること。等の要因によるもの)。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。