賃上げ税制(人材確保等促進税制)の改正について
賃上げ税制の対象の拡充
今週(No.904)の週刊T&Aマスターに「賃上げ税制の改正は”1人1人”を対象に」というタイトルの記事が出ています。
これは簡潔にいうと、現状の人材確保等促進税制が新卒・中途採用者などの「新規雇用者」を対象としているのに対し、岸田総理の打ち上げた「分配政策」により賃上げ税制の対象が既存社員を含む「1人1人」を対象にしようとしていることについて触れたものです。
日本の賃金水準
先日、日本経済新聞に以下のような記事がありましたが、日本の平均賃金がこの20年全く伸びていないことがわかります。
先進国の平均賃金の伸び
日本経済新聞記事より(下記リンク先参照)
ちなみに、東京の最低賃金は2000年時点では703円でしたが、2021年現在は1,041円まで上昇しています。2000年時点からすると実に48%の増加です。最低賃金がこれだけ上昇しているのにも関わらず上記の平均賃金が一切伸びていないということは、正規労働者の賃金が全く伸びていない、あるいは、低下していることが読み取れます(肌感覚として実感できるものでもありますが)。
人材不足と賃金
さて、日本の賃金が伸びていないことはデータからも実感としてもわかるところですが、一方で最近は人材不足が顕著に感じられるようになりました。経理や財務のフィールドでも人材確保が難しくなってきているのは、私の実務の範囲の中だけをみても如実に感じられる所となっています。
この状況を鑑みると、冒頭に記載した賃上げ税制と人材不足は相性としてはマッチしており、コロナ禍でも業績を伸ばしているような上場企業や大企業を中心に、賃上げによる人材確保への動きが加速するのではないでしょうか。
これがムーブメントとなり、中小企業レベルまで裾野が広がるようになれば、賃金の上昇、ひいては物価の上昇にも結実するかもしれません。
最後に
というのはあまりに楽観的な青写真かもしれませんが、人材不足は顕著になりつつあるため、賃上げ税制の改正を契機に大企業を中心とした賃上げによる人材確保や離職の抑止といった動きは出てくるのではないでしょうか。
令和4年の税制改正に注目したいところです。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。