会計のこと

【収益認識基準】取引価格の算定

【収益認識基準】取引価格の算定

収益認識基準では、以下の5ステップに従って収益認識を行います。

ステップ1 契約の識別

ステップ2 履行義務の識別

ステップ3 取引価格の算定

ステップ4 履行義務に取引価格を配分

ステップ5 履行義務充足により収益を認識

今回は、ステップ3「取引価格の算定」についてまとめます。

 

取引価格の算定とは?

まずは取引価格の定義から確認します。

取引価格とは、

財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価

の額(ただし、第三者のために回収する額を除く。)

企業会計基準第 29 号8項、47項

を言います。

 

要は、お客さんに提供した財(サービス)と引き換えに受け取る金銭が取引価格ですよ、だけどその中に、あとで第3者に渡す分は含めないからね、と言っています。

 

なお、ただし書きからは、「本人・代理人の区分」についての見解がうかがえます。

「本人・代理人の区分」については以下で解説しています。

【収益認識基準】本人と代理人【収益認識基準】本人と代理人 本人と代理人の区分 収益認識基準では収益認識のための5ステップの論点と同様に「本人と代理人の区分」が大...

 

そして、取引価格の算定には

契約条件や取引慣行等を考慮する

企業会計基準第 29 号47項

ことが要求されています。

 

具体的には、以下の4つの事柄すべての影響を考慮する必要があるとしています。

(1) 変動対価

(2) 契約における重要な金融要素

(3) 現金以外の対価

(4) 顧客に支払われる対価

企業会計基準第 29 号48項

 

変動対価

顧客との約束の中に変動対価(対価のうち変動する可能性がある部分)が含まれる場合には、当該変動対価部分を見積もる必要があります。

 

見積もりの方法には、①最も可能性の高い単一の金額による方法(最頻値法)と②対価の額を確率で加重平均した金額による方法(期待値法)があります。

いずれの方法を用いるかについては、より適切に対価の額を予測できる方を用いることが求められています。

いずれの見積もり方法も契約全体を通じ首尾一貫して適用する必要があり、また、見積もった取引価格は各決算日に見直すことが要求されます。

 

契約における重要な金融要素

明示的か黙示的かを問わず合意した支払時期によって、信用供与についての重要な便益が生じる場合には、当該契約は金融要素を含むものと判断します。

 

ざっくりした例ですが、2020年4月1日に10,000円の商品を顧客に販売したとします。

そして、この10,000円の支払いを5年後の2025年3月31日に行う、という形で契約したとします。

 

この場合、5年間支払いが猶予されることになるわけですが、これは5年間10,000円を貸し付けているのと同義であると考えることができます。

であれば、この10,000円の中には、10,000円を5年間貸し付けたことによる金利分も含まれている、と考えなければいけない、ということです。

図解すると以下のようになります。

 

例示・図解

この場合、商品代金の9,900円分については商品を引き渡した時点で計上します。

一方、残りの金利部分100円については5年間にわたって金利部分を償却原価法等の合理的な方法により収益計上することになります。

 

現金以外の対価

一般的ではありませんが、現金以外のものを対価として行う取引の場合もあります。

この場合、現金以外の対価の時価を取引価格として算定します。

現金以外の対価の時価が算定できない場合には、顧客に受けわたす財(サービス)の独立販売価格を基礎として対価を算定します。

 

顧客に支払われる対価

こちらもあまり一般的には見られないケースですが、解説しておきます。

 

ある商品を顧客に販売するために、顧客側で施設の改造を必要としており、これを企業が負担してあげるようなケースがこれに該当します。

つまり売上を上げるにあたって、先に顧客に対して支払いを行うケースです。

 

この場合、企業は支払いによって顧客から財やサービスを受領するわけではありませんので、売上から支払分を控除する処理を行います。

 

以下、事例にまとめました。

ここでは、A社がB社に商品10,000円分を販売し納入するにあたり、B社では改修工事が必要となりました。

当該工事費用は1,000円で、A社が負担する契約となっています。

この負担について、A社がB社の財やサービスを購入するものではないため、支払分を取引価格から減額することになります。

 

例示・図解

 

これを仕訳に起こすと、

 

① 補償金の支払時 

前払金 1,000 / 現預金 1,000

② 売上計上時

売掛金 10,000 / 売上高 9,000

/ 前払金 1,000

③ 債権回収時

現預金 10,000 / 売掛金 10,000

 

となります。

 

最後に

基本的には受け取る金銭が取引価格となるので、難しく考える必要はありませんが、上述した4パターンのように特殊なケースでは検討が必要になる点は注意して頭の片隅に置いておきましょう。

以上、取引価格の算定の解説でした。

これで概要をつかんで頂ければ幸いです。



※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。 



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