会計のこと

サステナビリティに関する開示について

サステナビリティに関する開示について

ここ最近、どの会計雑誌に目を通してもSGDsやESGに関する開示の話題で持ち切りであり、この手の話題から逃れることはできない状況となっています。

 

世界の平均気温の上昇を1.5℃までに

つい先日、COP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)が閉幕し、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えることが事実上、世界の新たな目標となりました。1.5度に抑えるのは、産業革命前と比較した時のものであり、産業革命は1760年代から1830年代頃です。

 

ちなみに、既に1.1℃上昇しており、これを1.5℃に抑えるためには「2050年までに世界の二酸化炭素排出量を実質ゼロにし、2030年までに2010年比で約45%削減することが必要」と言われているようです。

 

こういった環境への意識の高まりに比例して、ビジネス界においてはサステナビリティに関する開示が喫緊の課題となっています。

 

世界の動き

ISSB

具体的には、IFRS財団がISSBを設立することを発表したことが大きな動きとしてあげられます。

ISSBとはInternational Sustainability Standards Boardの略で、日本では国際サステナビリティ基準審議会と呼ばれます。

このISSBは、2022年3月までに気候変動に関する基準の公開草案を公表する予定となっています。

 

これまでにも気候問題に関する組織はいくつかありましたが、企業がサステナビリティに関する開示を行うにあたっての共通基準の作成をISSB(ひいてはIFRS財団)が担うこととなったわけです。

ちなみに、ISSBはIFRS財団直下の組織であり、IASB(国際会計基準審議会)と並ぶ組織ですから、その重要性がうかがい知れます。

TCFD

また既に運営されている組織にTCFD(気候関連財務情報タスクフォース)があります。これはTask Force on Climate-related Financial Disclosuresの略で、2015年にG20の要請から、FSB(金融安定理事会)によって設立されました。

 

TCFDは気候関連財務情報開示に関して、推奨すべきフレームワークを提言しており、その中核的要素として、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4つを上げています。

 

日本においてもこのTCFDの要請に基づき有価証券報告書において開示を行う企業も増えてきていますが、現状においては開示義務ではなく、また公表する情報に関する基準も明確なものはないため、世界標準となる基準の策定や開示内容の統一が課題と言えますが、この役目をISSBが果たすものと考えられます。

 

監査の範囲

ISSBによって基準が開発され、将来的にサステナビリティに関する開示が義務化されれば、こういった領域にも監査が入ることが想定されます。当然、その場合の第1候補として会計領域の監査を担っている会計事務所・監査法人に白羽の矢が立つことが考えられます。とはいえ、あくまで会計のプロ集団に環境に関する各種指数の監査を担うのは容易ではないでしょうから、様々な領域の専門家を巻き込んで監査の領域は拡大していくものと思われます。

 

最後に

サステナビリティに関する開示は日進月歩であり、当然これからも様々なトピックがあがってくることが想定されますので、今後も注意深くモニタリングしていきましょう。



※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。 



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