会計のこと

四半期レビューは任意に?

四半期レビューは任意に?

「四半期決算短信に対する監査人によるレビューの有無」

2022年12月27日、金融庁が金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告を公表しました。

今回の公表では四半期開示とサステナビリティ開示の方向性についてまとめられており、いくつかのトピックの中「四半期決算短信に対する監査人によるレビューの有無」についての言及があります。

 

四半期レビューに関する考え方と他国事例

まず前提として、四半期報告書と四半期決算短信が一本化されるため、決算短信にもレビューを義務付けるか否かが論点となっていた、という経緯がありますが、その点について、下記のような考え方や他国の事例が紹介されています。

四半期報告書については、これまで、四半期連結財務諸表に対する信頼性を確保する観
点から、監査人によるレビューが求められてきたところ、「一本化」後の四半期決算短信
についても、財務情報の信頼性の確保、虚偽記載の早期発見、虚偽記載の動機の抑止等の
観点から、監査人によるレビューの義務付けを求める意見があった。
他方、第1・第3四半期における監査人のレビューを義務付けない場合でも、第1・第
3四半期報告書廃止後に上場会社が提出することとなる半期報告書と年度の有価証券報
告書に対して監査人によるレビューや監査を行うことで、財務情報の信頼性を確保してい
くことが考えられるとの意見があった。また、速報性の観点から監査人によるレビューの
義務付けを不要とする意見もあった。
なお、法定の四半期開示義務を廃止した後、取引所規則においてプライム市場上場企業
に四半期開示を求めているドイツにおいても、監査人によるレビューは義務付けられてい
ない。

これらを踏まえて、下記の方向性が示されました。

以上を踏まえると、速報性の観点等から、四半期決算短信については監査人によるレビ
ューを一律には義務付けないことが考えられる。
他方、投資家から監査人によるレビューを求める意見が一定程度あることや、企業側に
もレビューを受けるかどうかは企業側の判断に委ねるべきであるとの意見があることを
踏まえ、企業においてレビューを受けるかどうかは任意とするとともに、投資家への情報提供の観点からレビューの有無を四半期決算短信において開示することが考えられる。
あわせて、例えば、会計不正が起こった場合(これに伴い、法定開示書類の提出が遅延
した場合を含む)や企業の内部統制の不備が判明した場合、信頼性確保の観点から、取引
所規則により一定期間、監査人によるレビューを義務付けることが考えられる。その際、
監査人によるレビューを義務付ける要件やその期間については、取引所において、不適正
開示等に対する実効性確保措置との関係も踏まえつつ、具体的に検討を進めることが期待
される。

 

簡潔にまとめると、

四半期レビューは任意

四半期レビューは任意に

四半期レビューは任意とし、一律に監査人によるレビューは設けない、という方向性が示されました。

 

レビューの有無は決算短信において開示

四半期レビューを受けている会社と受けていない会社が存することとなるため、レビューの有無は決算短信において開示されることとなります。

 

条件付きでレビューを義務化

会計不正が起こった場合や内部統制の不備が判明した場合には、一定期間、監査人によるレビューを義務付けることが考えられる、としています。

 

四半期レビューは基本的に続くと想定

このように、制度としては四半期レビューは任意化される方向で話は進んでいます。が、基本的には今後も多くの企業が四半期レビューは受け続けるのでないでしょうか。

四半期レビューが100%企業にとっての単なるコストである、という考え方に立脚するばレビューは受けない、という方向性も考えられますが、四半期レビューを受けることは企業にとって少ないメリットがあります(不正や誤謬などの発見、投資家からの信頼、等)。

また、条件付きとは言えレビューが義務化されることもあり得るため、レビューを受けたり受けなかったり、という状況は望ましいとは言えないでしょう。

監査側からしても、レビューは年度監査に資するものであり、仮にレビューをなくした場合には年度監査で実施する手続きが増加することも考えられ、その場合には大した費用の削減は見込めないことも想定できます。

また、なんといってもレビューを受けている会社と受けていない会社が混在する中で、どのような企業が投資家から信頼を集められるかを考えると、レビューを受けない、ということは想像以上のデメリットがありそうです。

 

これはあくまで私の予想でしかありませんが、四半期レビューについては最終的にどのように決定され、各々の企業がどのような決定を下すのか、注目したいところです。



※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。 



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