【収益認識基準】本人と代理人【補足②】
前回、前々回の2回にわたって収益認識基準の主要な論点となる本人・代理人の区分について解説してきました。
今回も上記エントリーの補足回です。
本人か代理人かを判定する際のポイントの1つに、財又はサービスを企業が「支配」しているかどうかが重要であることは上記の2エントリーで触れたところです。
では、財又はサービスを支配しているかどうかは、どのように判断すればいいでしょうか。
企業会計基準適用指針第 30 号 47項に、企業が財又はサービスを支配しているかどうか(ひいては本人か代理人か)を判断する際に考慮する指標を示しているので紹介・解説したいと思います。
これらはいずれも、指標に対してYesなら本人、Noなら代理人といった画一的な判断基準ではなく、判断するための一指標である点に注意しましょう。
つまり、総合的な以下の指標を考慮したうえで総合的な判断が求められます。
財又はサービスを支配しているかどうかを判断する際の指標
① 主たる責任を有しているか
② 在庫リスクを負っているか
③ 価格の裁量権があるか
財又はサービスを支配しているかどうかを判断するための指標
① 主たる責任を有しているか
1つ目の指標は、企業が財又はサービスを提供することに対し責任を負っているかどうか、という点です。
例えば、顧客に納品するシステムが、顧客のニーズや要求している仕様を満たすように対応する責任がこれに当たります。
② 在庫リスクを負っているか
2つ目の指標は、企業が在庫リスクを負っているかどうか、という点です。
例えば対象の製品を顧客に受け渡す前に当該製品の在庫リスクを負っている場合や、当該製品を顧客に引き渡した後に在庫リスクを負っている(顧客に返品する権利があり、返品の対応義務がある)場合がこれに当たります。
要は仕入れた分は、すべて自分たちで売り切る必要があり、仕入先に返品できないようなケースです。
この指標は、本人・代理人の区分における解説でたびたび触れられる論点ですから、ご存知の方も多いかもしれません。
在庫リスクを負っていれば本人、在庫リスクがなければ代理人と判断されるケースが多いように思います。
※ただし、本人・代理人の区分は総合的な判断が求められますので、個別に判断する必要がある点には注意が必要です。
③ 価格の裁量権があるか
3つ目の指標は、財又はサービスの価格に対する裁量権を企業が有しているかどうか、という点です。
企業が価格に対する裁量権を有している場合には、
企業が当該財又はサービスの使用を指図し、当該財又はサービスからの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を有している(=支配の定義)
可能性があると考えることができます。
ただし、上述した通り価格の裁量権を有しているだけでは財又はサービスを支配している(本人である)とは言い切れない点は考慮する必要があります(以下参照)。
ただし、代理人が価格の設定における裁量権を有している場合もある。例えば、代理人は、財又はサービスが他の当事者によって提供されるように手配するサービスから追加的な収益を生み出すために、価格の設定について一定の裁量権を有している場合がある。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。