内部統制報告制度(J-SOX)の概要
今回は内部統制報告制度(J-SOX)の概要についての説明です。
その前にそもそも内部統制って何?という方はこちらをご参照ください。
内部統制報告制度(J-SOX)とは?
内部統制報告制度(J-SOX)は、金融商品取引法第二十四条の四の四に規定されている制度で、有価証券報告書を提出しなければならない会社が内部統制について評価した報告書(内部統制報告書)の提出が義務付けられています。
そして、同法第百九十三条の二の2項において、利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならない旨規定されています。
ここで注意点したのは、監査は内部統制そのものではなく「内部統制報告書」が対象となっている点です。
ここは間違えやすいところなので抑えておきましょう。
内部統制報告制度(J-SOX)の対象者は?
原則
内部統制報告制度(J-SOX)は金融商品取引所に上場している企業が対象となります。
例外
例外として上場後3年間は内部統制報告書への監査は免除されています(有価証券報告書の監査は免除されません)。
ここで間違えてはいけないのが、内部統制報告書の提出は免除されない点です。
免除されるのは、「内部統制報告書への監査」だけとなっています。
なお、2013年にサントリー食品インターナショナルが東証1部に上場しましたが、このような大企業が上場する際には内部統制報告書への監査は免除されません。
企業が行うこと(経営者の責任)
それでは続いて内部統制報告制度(J-SOX)において企業が行わなければならないことを確認しましょう。
経営者は、財務情報を正しく作成するための内部統制を整備・運用する役割と責任を有しています。
その上で各事業年度の決算期末日時点での有効性を評価し、その結果を「内部統制報告書」で報告することが求められています。
整備とは
整備とは内部統制の仕組みが過不足なくしっかり整っているか、ということです。
車で言い換えるなら、ボディやタイヤ、各種部品等がすべてそろっていつでも走れる状態になっているかどうか、ということですね。
運用とは
運用とは、整備された内部統制がしっかりと継続的に機能しているかどうか、ということです。
車で言い換えると、整備された車が一定の期間ずっと走り続けているかどうか、ということになります。
監査法人が行うこと(監査法人・公認会計士の責任)
監査法人は独立した立場から「内部統制報告書」の監査を行う責任を有しています。
上述しましたが、「内部統制を監査」するのではなく「内部統制報告書」を監査し、意見を表明することでお墨付きを与える役割があります。
「内部統制報告書」を監査する、ことと「内部統制」を監査することの違いはつまりこういうことです。
「内部統制報告書」を監査する、とはつまり?
会社の内部統制に重要な不備があるとします。
会社としても監査法人としても、このままで良いとは言えない状況です。
したがって、会社は「内部統制報告書」にわが社の内部統制には重要な不備がある、と記載し提出したとします。
この場合に監査法人側は、実態にそった内部統制報告書が提出されているので、「内部統制報告書」は適正として意見を表明します。
しかしながら内部統制に重要な不備があるにも関わらず、会社が「内部統制報告書」に重要な不備はない、と記載し提出したならば、監査法人は「内部統制報告書」は不適正として意見を表明するわけです。
補足
会社法の内部統制
実は会社法においても内部統制の構築が求められています。
ただし、こちらは有価証券報告書や内部統制報告書のようなレベルでの開示等は必要なく、また社内の監査役等の監査は必要ですが、外部の公認会計士や監査法人による監査も求められていません。
では、今日はここまでとします。
次回以降、企業が内部統制報告書を提出するまでのプロセスについてまとめたいと思います。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。