新版イチから知る! IR実務/米山徹幸
IR活動の重要性の高まり
昨今、IR活動の重要性が高まってきていることは多くの管理部門担当者の方が認識していること思われます。
IRは広報活動であり、その目的を一義的に定義することは難しいですが、大きな目的の1つとして企業価値の公正な評価を得るためと言えます。すなわち適正な株価の形成です(株価を上げるのが一義的な目的ではなく、結果として株価が上がることに繋がることが多い)。
特に日本企業の場合、会社の実態に照らして株価が割安のままであることが多いと言われており、ひいては資本コストの増加につながり経営効率の悪化につながるリスクが生じます。現在の日本において、借入コストは過去に類を見ないほど小さくなっていますが、今後は金利が上昇する可能性も十分あり、となれば資本による資金調達の必要性も高まることが見込まれます。
また、ESGやSDGs、TCFD等に関する関心の高まりに合わせ、非財務情報の開示の充実が求められるようになったことも、IR活動の重要性に強く影響しています。欧米ではIR活動の重要性への認識は日本より高く、IR活動に特化した部署が置かれている企業も多くありますが、現在の日本株式市場の売買代金シェアのおよそ6~7割を外国人投資家が占めていることを考えれば、より充実したIR活動が必要になることは明白です。
とはいえ、IR活動は非常に幅広い知見と経験が求められるものであり遂行する業務も幅広く、新しく始める業務としてはハードルが高く敷居が高い業務の1つです。
「新版 イチから知る! IR実務/米山徹幸」
ここで参考にしたい本が、掲題の「新版 イチから知る! IR実務/米山徹幸」です。
目次
はじめに
第1章 IRの始まりと仕事
第2章 IR部門の仕事を知ろう(Ⅰ)
第3章 IR部門の仕事を知ろう(Ⅱ)
第4章 IR情報を届ける相手を知ろう
第5章 プレゼンテーション
詳細についての記述は避けますが、IRの歴史からIRの定義や目的、そして、IR部門が担う業務が網羅的・広範にわたって詳細に記載されており、非常に参考になる内容となっています。
経験の浅いIR部門には本著に記載のIR活動をすべて行うのは難しいと思われますが、何から手を付けていいかわからない多くの企業にとって、本著を1つのマニュアルがわりに、業務内容の取捨選択するためのツールとして役立てることができるでしょう。
また、新版とある通り2020年3月に新版として発売されたこともあり、最近のIR事業まで織り込んだ内容になっている点も
最後に
IR活動は、企業のサービスや事業内容に精通しており、かつ、ファイナンスやアカウンティングへの造詣も求められる非常に要求水準の高い人材が求められるものと言えます。さらには上述したようにESGやSDGs、TCFDへの理解や英語のスキルも必要です。
しかしながら、そういった人材の確保は大企業や有名企業であっても難しいことが容易に想像がつきます。
今後ますますIR活動の重要性が増すことを鑑みた、計画的なIR部門の強化が求められるでしょう。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。