会計のこと

IFRSの基本的な考え方と相違点

IFRSの基本的な考え方と相違点

IFRSを導入する企業が増え続けています。

日本取引証券所のホームページによれば、2019年11月現在、IFRS適用済の会社は204社、IFRS適用を決定した会社は12社で、合計216社にのぼります(おそらく、東京証券取引所に上場している企業だけを対象としているとも思われるので、他の市場も含めるともう少し多いかもしれません)。

日本証券取引所HPより(https://www.jpx.co.jp/listing/others/ifrs/index.html)

 

そこでIFRSの基本的な考え方をおさらいし、日本基準との違いを確認したいと思います。

細かい定義や論点等は割愛し、基本的事項に照準を絞ります。

 

IFRSとは…

そもそもIFRSとは、International Financial Reporting Standardsの略で、「イファース」とか「アイファース」なんて呼ばれていますが、欧州を中心に世界の多くの国で採用されている会計基準です。

日本でも以前(2010年前後頃)強制適用されるかどうか、ということで話題になりましたが、強制適用は見送られ、現在は一部の企業が任意適用連結財務諸表作成時に採用されています。

IFRSを強制適用していない経済大国は、アメリカ、インド、日本等の限られた一部の国となっています。

では、IFRSの特徴を確認していきましょう。

 

原則主義

IFRSは原則主義と言われています。一方、我が国日本の会計基準は細則主義と言われています。

どういうことかと言うと、原則主義はその名のとおり、基本的な原則を定め、詳細な説明やガイダンスは基本的に設けていません。

一方、日本の会計基準に見られるような細則主義は細かく決定された一定のルールに従って会計処理を行うことを意味します。

原則主義」を採用すると、判断と見積もりの要素が増えるといわれています。

 

IFRSのメリットは、原理原則を明確にし、例外を認めないという原則主義に基づいて会計基準を設定しているところにあります。

細則主義によれば、一律の会計処理・開示がなされますが、会計基準の趣旨を逸脱した巧妙な手口で会計基準にそぐわない処理が行われる可能性があります。またそれに対応するために、新たな会計基準が設定され、監査六法がそのたびに厚みを増し、その開発コストもかさんでいきます。

これに対し、原則主義では、原理原則にしたがって会計処理を行うことが重視されているため、詳細なガイダンスがなく、1つ1つの会計事象に対して判断を要することになります。

1つ1つの判断は容易ではないかもしれませんが、より実態に即した、「実質優先思考」にもとづいて各社が会計処理を行うことになります。

 

資産負債アプローチ

IFRSは基本的な考え方として、資産負債アプローチをベースとしており、一方日本基準は伝統的に収益費用アプローチをベースとしているといわれています。これはそれぞれ、利益を計算するためのアプローチの違いを意味しています。

資産負債アプローチでは資本取引を除く、資本の変動を重視していることから、包括利益を重視するという考え方とも結びついてきます

(包括利益では、損益計算書には表れない有価証券の評価差額等も含まれます)。

一方日本基準は収益費用アプローチを採用しているため、利益の計算上、その他の包括利益を含まず、当期純利益が重視されてきました

(なお、IFRSへのコンバージョンの観点から、現在は日本基準でも包括利益を算出し、開示しています)。

 

演繹的アプローチ

日本の会計基準は、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」なんて言われることからわかるように、帰納的アプローチで作成されています。つまり、会計実務の中で習慣化されたものの中から妥当なものを抜き出す、という方法です。

一方IFRSでは、論理的に目的適合性のある会計情報を提供するために演繹的アプローチで会計基準を作成しています。

実務に会計を合わせるのではなく、論理的に会計基準を作成し、実務を基準に当てはめる、というアプローチです。

 

経営者の恣意性排除

会計処理においては、判断や見積もりの要素が多く存在するため、経営者の恣意性が介入しやすくなっており、近年その傾向はますます強くなっています。

そこでIFRSでは、経営者の恣意性を排除するため、公正価値会計へのシフト、および、キャッシュ・フロー計算書の精緻化を行っています。

公正価値においては、観察・測定可能な評価を行うこと、キャッシュ・フロー計算書においては、判断や見積もりが介入することのできない、お金の動きそのものに焦点を当てることで、経営者の恣意性を排除しようとするものです。

 

注記の増加

IFRSを採用すると、有価証券報告書上の注記の量が半端なく増えます。その分、BS、PLの記載は日本基準に比べやや簡素化します。IFRSを採用するにあたって一番コストがかかるのは、GAAP差異の調整よりも、注記にかかる人員や時間でしょう。

IFRSベースで作成された有価証券報告書をご覧になったことがない方は一度、確認してみると良いでしょう。

IFRS開示例

ソフトバンクグループ株式会社 有価証券報告書
アサヒホールディングス株式会社 有価証券報告書

 

そもそも、IFRSにおいては、財務諸表本体(BSやPL、CF等)の表示項目について、最低限表示すべき項目が規定されているのみで、日本基準(財務諸表用規則等)のような詳細な規定はありません。

そのため、IFRSに基づいて作成された財務諸表は、日本基準に基づき作成されたそれよりも一般的に財務諸表本体(BS/PL等)の表示が簡素になります。

 

一方、IFRSの基本的な考え方として、財務諸表本体に反映しないものの利害関係者が企業の実態を把握するために必要は情報は、注記情報として開示を求める、というスタンスです。

したがって、適切に企業の経済的実体を明らかにするために、財務諸表の本体以外に膨大な注記が行われる、という状況にあります。

 

最後に

ここではIFRSの基本的な特徴についてご紹介しました。

会計処理を考えるにあたって、個別の論点だけを見て答えを出すこともできると思いますが、根本的な考え方や背景を理解していると、いっそう会計への理解が進みます。

 

 

 

今、IFRSを採用している会社で働いている方、これから採用しようとしている会社の方、一人でもお役に立つことができていたら幸いです。

※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。 

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