J-SOXって何をすれば良いの?
J-SOXは具体的に何から始めれば良いのか
ここまで2回にわたり内部統制やJ-SOXの概要について説明してきました。
しかしながら実務においてJ-SOXに対応するためには何をすれば良いのか具体的に作業や手順が理解できているでしょうか?
今回は、これから内部統制報告制度すなわちJ-SOXに対応する会社が何をすれば良いのか、その枠組みを説明したいと思います。
1つ1つのプロセスは細かく見ると専門的な話になりますので、まずは大きな枠組みから掴んで行きましょう。
形式的な説明になりがちですが、できる限り実務のイメージもつくように心がけていますが、わかりづい点などはコメント頂ければと思います。
評価範囲の決定
まず最初に会社は評価範囲を決定しなければいけません。
財務報告に係る内部統制は連結グループ内のあらゆる業務の中に組み込まれています※が、そのすべてを評価する必要はありません。
※通常、会社は運営されている中で自然発生的に内部統制が構築されています。J-SOXはそれで過不足なく十分かどうかを検証していくイメージです。
全社的な内部統制の評価範囲
詳細は別途ご説明しますが、大枠としてまずグループ全体の中から重要でない範囲を評価範囲から除外します。
仮にその会社の内部統制が機能していなくても財務報告に影響を与えないような小さい会社は、連結グループの中で重要性がないため評価範囲から外しても問題ない、と考えられているためです。
連結売上1兆円のグループにおいて売上高が100万円の会社は取るに足らないので評価しなくて良いですよ、ということですね。
※このように評価範囲から除外される拠点は、「重要性が僅少」と判断します。重要性が僅少であるかどうかの判定は慎重に行う必要があります。
業務プロセスの評価範囲
続いて評価範囲となった重要な拠点(会社)については、評価範囲とする業務プロセスを特定します。
評価範囲とする業務プロセスは以下の2つに大別されます。
① 事業目的に大きくかかわる勘定科目
多くの企業で、売上高や売掛金、在庫等が評価対象となります。
その他、会社によって原価計算プロセスや固定資産プロセスが対象になることもあります。
② 個別に評価対象に追加すべき重要性の大きいプロセス
これは各社によって異なりますが、対象となるプロセスとして
・リスクが大きい取引を行っている事業又は業務に係る業務プロセス
・見積りや経営者による予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセス
・非定型・不規則な取引など虚偽記載が発生するリスクが高いものとして、特に留意すべき業務プロセス
と言われています。
3点セットの作成
評価範囲が決定したら、3点セットを作成します。
内部統制の3点セットといえば、
フローチャート
業務記述書
リスクコントロールマトリックス(RCM)
の3つです。
通常あまり聞き馴染みのないこれらの資料の作成には、内部統制への理解と会社の業務への理解が求められ、精度の高い3点セットを作成するには高度な知識と経験が必要です。
現在上場している企業においても、会社によって3点セットの精度には大きな差があるのが現実です。
整備評価・運用評価
3点セットの作成が完了したら、あるいは3点セットの作成と並行して整備評価を行い、その後運用評価を進めていきます。
整備評価は、会社が抱えるリスクに対し内部統制に過不足がないかを確認する手続きであり、運用評価は整備評価で確かめた内部統制が継続的に機能しているかを検証する手続きです。
評価方法には、質問・査閲・観察・再実施等がありますが、リスクや統制の内容により使い分けて行います。
そして、これらの評価はすべて文書化し、結果報告に向けて整理する必要があります。
不備の改善
整備評価・運用評価にて、内部統制に不備があった場合にはこれを改善する必要があります。
不備があるということは会社のリスクに対して有効な対応がとられていないということですので、しっかり内部統制を立て直さなければいけません。
再評価
不備が改善されたら、本当に改善されているかどうかを再評価する必要があります。
これは手続きとしては上述した整備評価・運用評価と同等の内容となります。
結果報告
そして、評価範囲となったすべての統制が問題なく整備、運用されていることが確かめられたら、「内部統制報告書」にて内部統制が有効に機能していることを報告します。
この時、内部統制の不備の改善が間に合わず、有効に機能していると言えない場合も残念ながらあるのが実態です。
そういった場合には、その旨報告しなければいけません。
最後に
いかがでしたでしょうか。
上述した各プロセスの詳細については別途解説したいと思いますが、は大まかな流れをつかんで頂けたでしょうか。
参考になれば幸いです。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。