グループ通算制度における「通算税効果額」について
実務対応報告42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱いについて」
2020 年 3 月 27 日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」において、連結納税制度を見直しグループ通算制度へ移行することが決定したことを受けて、2021年8月12日に実務対応報告42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱いについて」が公表されました。
当該報告の3項において、下記の文言が掲載されています。
本実務対応報告は、通算税効果額の授受を行うことを前提としており、通算税効果額の授受を行わない場合の会計処理及び開示については取り扱っていない。
※ハイライトは、当ブログで加筆
「通算税効果額」という聞き馴染みのない文言がありますが、「通算税効果額」とは、同報告の5項10号にこのように記載されています。
「通算税効果額」とは、法人税法第 26 条第 4 項に規定する通算税効果額をいい、損益通算、欠損金の通算及びその他のグループ通算制度に関する法人税法上の規定を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額として、通算会社と他の通算会社との間で授受が行われた場合に益金の額又は損金の額に算入されない金額をいう。
と、言うことで、これを読んで腹落ちする人は相当な会計マニアだけかと思われますので、今回は「通算税効果額」について詳しく理解できるよう、解説を行いたいと思います。
「通算税効果額」とは
「通算税効果額」は連結納税制度を導入していない会社においてはイメージが付きにくいかもしれません。
これまでの連結納税制度、そして2022年4月1日以降開始されるグループ通算税度においては、以下のような実務が行われることが多く(そして今後も想定される)ため、「通算税効果額」という規定が定められました。
そもそもグループ通算制度とは…
そもそもの話として、ざっくりいうと、連結納税制度もグループ通算制度も完全子会社関係にある連結企業において、欠損金を融通しあい、連結グループ全体として税額を最小化するための制度です。
それを踏まえて下記のような事例をもとに考えてみます。
例えば以下のような連結グループ会社(P社、S1社、S2社)があったとします。
そして、このような連結グループ会社においてグループ通算税度を採用すると、「欠損金の通算」を行う事が可能となります。
「欠損金の通算」を行うと、下記のようにP社、S1社において税額を減少させることができます。
と、ここまではイメージが付きやすいかと思います。
この時、P社、S1社では税額が減少していますが、これはあくまでS2社の欠損金を活用したことによるものであり、S2社の将来的な税額減算分を前借りしている、と捉えることができます。
そのため、実務的にはP社及びS1社において減額された税額分をS2社に金銭として授受することが一般的に行われます。
つまり、P社もS1社も本来の税額分を支出し、S2は欠損分に相当する金額の還付を受けるようなイメージです。
この差額分を限度として授受される金額を「通算税効果額」と言い、その名の通り、益金の額又は損金の額に算入されないものと規定されています(後述しますが、通算税効果額は法人税等に準ずるものとして取り扱われるため)。
したがって、このケースの場合、P社は223百万円、S1社は137百万円をS2社にそれぞれ金銭等で授受した時に、これは「通算税効果額」として、P社及びS1社では損益には計上されず、S2社においては益金に計上されないこととなります。
通算税効果額の財務諸表上の取扱い
ちなみに、P社及びS1社においては法人税等の支払い、S2社においては法人税等の還付と同様に認識し、PL上は法人税等に、BS上は未収入金や未払金等の科目に含めて表示することとされました。
つまり、通算税効果額分の金銭を授受する場合、PL上は通算前と同様の法人税等を計上することとなります。
通算税効果額は、法人税及び地方法人税を示す科目に含めて、個別財務諸表における損益計算書に表示する。
また、通算税効果額に係る債権及び債務は、未収入金や未払金などに含めて個別財務諸表における貸借対照表に表示する。
実務対応報告第 42 号第25項
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。