企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」
時間算定会計基準(企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」)が2019年7月4日に公表されました。
ここでは、当会計基準を簡単にご紹介します。
基本的な考え方
これは、IFRS第13号「公正価値測定」やTopic820「公正価値測定」などの国際的な会計基準との比較可能性を向上させるためであり、そのため、IFRS第13号「公正価値測定」の定めを基本的にすべて取り入れる形となっています(時価算定会計基準第 24 項及び第 25 項) 。
範囲
この時価算定会計基準は、
①金融商品会計基準における金融商品
②棚卸資産会計基準におけるトレーディング目的で保有する棚卸資産
の時価に適用されます(時価算定会計基準第 3 項、第 26 項から第 28 項)。
②に該当する棚卸資産を保有する会社はその多くが金融機関だと思うので、一般的な上場企業やそのグループ会社が対象となるのは、①の金融商品会計基準における金融商品がほとんどでしょう。
時価の定義
「時価」とは、
算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格
のことを言います。
今回の基準の公表で、時価は
直接観察可能であるかどうかにかかわらず、算定日における市場参加者間の秩序ある取引が行われると想定した場合の出口価格(資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格)
であり、
入口価格(交換取引において資産を取得するために支払った価格又は負債を引き受けるために受け取った価格)
ではないことが明記されました(時価算定会計基準第 5 項及び第 31 項、金融商品会計基準第 18 項)。
また、
その他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末前 1 か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる定め
は削除されました。
なお、「公正価値」あるいは「時価」という表現について、内容に差異はありません。
時価の算定方法
時価の算定する際には、状況に応じて十分なデータが利用できる評価技法を用いる必要があります。例えば、マーケット・アプローチやインカム・アプローチ、コスト・アプローチ等がそれにあたります。至極当然ではありますが、技法を用いるにあたっては、関連性のある観察可能なインプットを最大限利用し、観察できないインプットの利用を最小限にすることが記されています(時価算定会計基準第 8 項から第 15 項)。
インプットについては、3段階にレベル分けされています。
・レベル1
時価の算定日において、企業が入手できる活発な市場における同一の資産又は負債に関する相場価格であり調整されていないもの
・レベル2
資産又は負債について直接又は間接的に観察可能なインプットのうち、レベル 1 のインプット以外のインプット
・レベル3
資産又は負債について観察できないインプット
これだけ見るとなんだかよくわかりませんが、イメージとしてはレベル1が上場企業の株価、レベル2が財務諸表等の決算書類、レベル3がそういったものが入手できない、といったようなところでしょうか。
開示においては、上述のインプットのレベルに応じて、時価をもって貸借対照表価額とする金融資産及び金融負債について、貸借対照表日におけるレベル 1 の時価の合計額、レベル 2 の時価の合計額及びレベル 3 の時価の合計額をそれぞれ注記することが定められています(企業会計基準適用指針第 19 号 金融商品の時価等の開示に関する適用指針第5項ー2)。
適用時期
適用時期は2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からで、2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用も可能です(企業会計基準適用指針第 31 号 時価の算定に関する会計基準の適用指針 第25項から26項 )。
最後に
私の印象としては、今回の時価算定会計基準の公表でこれまでと何かが大きく変わるといったことはなく、細かいところでIFRSへコンバージョンされたような感覚です(非金融が専門だからでしょうか。金融機関は色々大変かもしれません)。とはいえ開示等での変更はありますので、金融商品関係を担当する方はまだまだ先のことだからとしないで、早めに準備しておくといいかもしれません。
今回公表された内容について、企業会計基準委員会で公表されたページはこちら
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。