コーポレート・ガバナンスと社外取締役
コーポレートガバナンス・コードの改訂に向けて(2021年春)
本日、2020年12月8日(火)に「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第22回)が開催されました。
本会議の開催に伴い、金融庁のウェブサイトに会議資料が提供されています(linkはこちら➡「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第22回)議事次第)。
2021年春にコーポレートガバナンス・コードの改訂が予定されていますが、上記資料の内容を見ると社外取締役に関して、2018年改定時よりもさらなる厳格化を検討していることが見受けられます。
社外取締役に関する規定の強化
諸外国のコードや上場規則をみると、独立社外取締役について、取締役会全体の3分の1以上、ないし過半数の選任を求めている国が大宗となっている。
我が国においても、特に 2022 年の新市場区分移行後の「プライム市場(仮称)」については「我が国を代表する企業の市場」として高い水準のガバナンスが求められている。
こうした観点も踏まえ、同市場の上場企業に対し、独立社外取締役の3分の1以上の選任を求めるべきである。さらに、それぞれの経営環境や事業特性等を勘案して必要と考える企業には、独立社外取締役の過半数の選任を検討するよう促すべきである。
現状、2名以上の選任が求められている社外取締役について、最低でも1/3以上の選任することを求めるべきであるとし、必要と考える企業においては現状1/3以上としているところ過半数の選任を検討することを求めるとしています(半数以上ではなく過半数)。
現在のCGC | 改訂予定のCGC | |
社外取締役の人数 | 2名以上 | 1/3以上 |
必要と考える企業の社外取締役の人数 | 1/3以上 | 過半数以上 |
さらに読み進めると、社外取締役のスキルマトリックスの開示の公表を求めることを検討しています。
社外なら誰でも良いよ、というのでは困るので、事業戦略に照らして取締役会が必要とするスキルは何なのかを特定した上で、スキルマトリックスにより、それにふさわしい人材を選定していることを示すことでガバナンスを強化しようということです。
その際、独立社外取締役には他社での経営経験を有していることを求める方針です。
社外取締役の人材不足はかねてより問題視されてきていますが、これにより人材難には拍車がかかることが想定されます。
日本のコーポレート・ガバナンスの課題
このほか、人材のダイバーシティの確保、招集通知等の英文開示、オンラインによる株主総会の実施や総会時期の分散化等、日本のコーポレート・ガバナスにはまだまだ課題が多いことがうかがえます。
米国市場に比べ、日本の株式市場が軟調に推移していることを鑑みと、英文開示等の需要はこれから根強く存するのではないかと推察します。
ディスクロージャー支援大手のプロネクサスや宝印刷も、英文開示には力を入れていることが見て取れます。
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来春のコーポレートガバナンス・コード改訂にむけて、どのような議論がなされるか、今後も注目したいと思います。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。