会計のこと

ワイヤーカードの預金消失・破綻について

ワイヤーカードの預金消失・破綻について

ワイヤーカードの預金消失からCEOの辞任、経営破綻について気になったので調べてみました。

 

現時点(2020年7月7日現在)でかわっていることはあまり多くないようですが、まとめておきます。

 

※情報源は会計関連の定期刊行媒体や、ネットニュースなどであり、その真偽まで検証していませんが(できませんが)、あらかじめご了承ください。

 

また、現時点では明らかになっていないことも多いようですので、随時更新したいと思います。

 

ワイヤーカード社

ワイヤーカードはwikipediaによると

ワイヤーカード(ドイツ語: Wirecard AG)は、決済サービスに関するシステム提供や各種ソリューションを提供する多国籍企業。ドイツ・ミュンヘン近郊のAschheimに本社を置き、世界40カ国以上に拠点を持つ。フランクフルト証券取引所上場企業(FWB: WDI)。

とにあります。

 

「決済サービスに関するシステム提供」とあるように、ドイツにおいては電子決済のパイオニア的企業でDAX(ドイツ株式指数。ドイツの主要30銘柄で構成。日本のTOPIXのようなもの)に組み込まれる程、規模も勢いのある企業だったようです。

 

日本で言うとソフトバンクのような感じでしょうか。

 

会社の設立は1999年で、2005年に上場。

 

今回の不正疑惑で退任し、逮捕された元CEOのマークス・ブラウン氏は2002年からCEOをつとめていました。

 

従業員は5,800名(会社HPより)、世界26か国に拠点を構えています。

 

今回の事件により、2020年6月25日に破産申請を行いました。

 

19億ユーロ(約2,300億円)の資金不明

今回、ワイヤーカードが問題とされたのは、海外の銀行預金口座にあるとしていた19億ユーロの資金が、監査法人による監査手続きでその実態を認められない、とされたことに端を発しました。

 

監査法人はEY(アーンストアンドヤング)。

 

日本では東芝が問題となった時の監査人で、奇しくも今回もまたEYの関与先が問題となりました。

 

会計監査では、一番最初に現預金が実在し金額が正確であるかを検証するために、企業の取引先の銀行に「確認状」を送付し(紙面or電子)、実際に銀行で預かっていると認識している金額を記載の上、返送してもらうわけですが、今回、取引先とされる銀行からは「ワイヤーカード」とは取引がない、という回答だったとされています。

 

そのため2019年の年度監査が終わらず、この問題が世間に公表されるやいなやCEOのマークス・ブラウン氏は退任しました。

 

なお、通常監査法人は銀行の預金については毎年必ず銀行あてに確認状を送付しますが、3年間ほどこれを送らずに代替的な手続きを行っていた、との報道もあります。

 

実際、銀行へ確認状を送らないケースというのは相当レアなことではありますが、絶対ないとも言い切れないところです。

 

しかし、そのレアケースが不正の隠れ蓑になってしまったことが証明されてしまったわけですから、今後は世界中で一切の例外なく確認手続が行われることになることが予想されます。

 

2019年1月不正会計疑惑

今年になって預金消失というアンビリーバブルな事件が起きましたが、2019年1月に英紙フィナンシャルタイムズが不正会計疑惑を取り上げています。

 

調べてみると2019年1月に匿名による告発が連邦金融監督庁(baFin。日本でいう金融庁のようなものかと思います)にあったそうなので、FT紙の記事もこれをもとにしたものかと推察します。

 

このように去年のはじめの段階で不正疑惑はあったにもかかわらず、ここまで問題にならなかったのは「連邦金融監督庁(baFin)」がその役目を適切に果たさなかったからではないか、という指摘があるようです。

 

ここには、米中のIT企業の躍進に遅れをとりたくないというドイツ国家としての意識により、ドイツ国内の先進的なIT企業への監視が適切に機能しなかった要因ではないか、との声もあります。

 

 

またこの件に関し、EYはワイヤーカードの預金の消失について

「世界の複数の機関が関与した、入念かつ巧妙な詐欺行為だ」

「最大限の強固な監査手続きでもこの種の不正は見つけられないだろう」

との声明を出しているようです。

 

一方で、個人投資家がEYの現パートナー2名と元パートナー1名に対し刑事告発したという報道があります。

 

また、ソフトバンクがEYに対し提訴を検討しているという記事もありました。

 

 

ソフトバンクの名前がなぜあがるのか

一見無関係なソフトバンクの名前が出てくるのは、2019年4月にソフトバンクとワイヤーカードが戦略的提携を行ったという報道によるものです。

 

この提携をもとに、ソフトバンクはワイヤーカードへ転換社債による融資を行ったとの記事がある一方で、実際には第3者のファンドを通じて行ったものでソフトバンクに損失は生じていない、との報道もあり、真相は定かではありません。

 

 

現在までに逮捕された関係者

報道によると、これまで(2020年7月7日)にCEOであったマークス・ブラウン氏が虚偽の取引を通し、同社の利益を不正に水増ししていた疑いで逮捕されています。

 

また、ワイヤーカードの子会社の経営者であるオリバー・ベレンハウス氏も逮捕されました。

その他、COOのヤン・マルサレクは行方不明になっているそうです。

 

まだまだ事件の全貌は解明されていないと思われますので、今後も逮捕者が出てくる可能性は大きいでしょう。

 

 

 

追加情報があれば随時更新します。



※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。 



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