スピードは感動を生む
松下幸之助は「商売は感動を与えること」と言ったそうですが、では我々のような会計業界で働く者はどのようにすれば感動を与えることができるでしょうか?
その答えの1つがタイトルにある通り、「スピード」だと考えています。
会計の世界における感動とは
会計の世界において、綺麗に伏線を回収して非日常を提供する映画や小説のような、心の底から感情があふれ、涙がこぼれるような感動を与えることはなかなか難しいものがあります。
クオリティ(質)による感動
クオリティ(質)はどうでしょうか?
これができれば理想的です。
一口に会計と言っても業務は様々ですから、単純な仕訳業務から、資金調達支援、M&A支援、決算早期化、等々、多岐にわたります。
高度な専門性を要する業務や1つ1つの丁寧な作業によって、感動を提供できるかもしれません。
目指すべき1つのファクターとして認識しておく必要があるでしょう。
ただし、クオリティの難しいところはクライアントがクオリティのいかなる面を求めているか、を丁寧に知る必要があるところです。
実際の仕事では、クオリティという言葉で一括りにしてしまうには多すぎる程、様々な要素を内包しています。
どこにバリュー(価値)を感じてもらえるかは、人によって違う場合があります。
また、潜在的な需要まで見込んで行った仕事であっても、顧客がそこに気づいていない場合、バリューとして認識されない可能性もあります。
ビジネスにおいて、潜在的な需要をいかにして顕在化させるか、ということはどの業界でも難しいと思いますが、それは会計業界においても同様なのです。
スピード(速さ・早さ)による感動
ではスピードはどうでしょうか?
私は「スピード」は大きな価値を生み出すと考えています。
そして、「スピード」はどのクライアントであっても確実に高いバリューを提供できます。
月次や四半期、年次といった一定期間の周期の中で、どれだけ鮮度の高い情報であるかが重要視される会計の世界において、仕事のスピードは非常に重要です。
会社の置かれたステージやマネジメントの要求によって、求められるクオリティに多少の違いはあっても、鮮度が失われた情報は比例して価値が損なわれてしまうからです。
ダイナミックに変化していく経済社会の中で、マネジメントや利害関係者は一分一秒でも早く情報を入手し、次から次へと経営判断をしています。
だからこそ一流企業は、少しでも早く管理会計上の情報を入手・整理するために必死に取り組んでいますし、また、適時開示等の社会的な要求に答えようと努めています。
現場レベルにおいても、新しいチャレンジを次から次へと行っているようなスタートアップ企業やベンチャー企業、あるいは、働き方改革を受けて効率性を求められる企業において、潤沢なリソース(人的・時間的)をもって対応することが難しいケースが多々あります。
このような現場でスピード感が失われると命取りになりかません。
毎月毎月、新しいトピックや事象が舞い込んでくる以上、スピード感をもって対応していくしかないからです。
このような現実から、「スピード」は思っている以上の差別化を可能にしてくれます。
実際、あわただしく時間が流れていく現場では、悠長に物事を検討する余裕はありません。
(一方で、時間がないからと言って慎重性の欠ける判断を行うことは危険です。が、それはまた別の話)
とりあえずやってみる、は状況次第
スピードで差別化する2つの方法
スピードで差別化する方法には2種類あります。
圧倒的な作業スピードで仕事を終わらせる
単純な話ですが、1つ1つの作業を通常の1.5倍速、あるいは2倍速くらいで終わらせることで差別化できます。
単調な作業でも、クライアントが想定している時間の2/3や1/2で終わらせることができると、「この人は違うな」という認識をして頂けるものです。
そのためには、会計システムを良く理解し使いこなすことであったり、エクセルスキルを高めてあらゆるショートカットキーや関数を使いこなすことが必要であったりします。
あるいは、成果物作成ためのプロセスを瞬時に思い描き、作業の最中にも適宜軌道修正しながら対応できるスキルが求められます。
こういったスキルは日々、意識して磨いていくしかありません。が、磨ければ必ず光るものです。
【頻出】公認会計士がよく使うWindowsショートカットキー
短時間で終わらせることのできる仕組みを作る
仕組化させ、効率化することも1つのスピード化の手段となります。
多忙な現場でこれができるともはや救世主扱いされることでしょう。
とはいえ、これは実際には口で言うほど簡単ではありません。
優秀な人材が豊富な上場企業や有名企業では、こういったことは一通り検討され手は尽くされているからです(今後、RPAの導入やAIの活用で実現化されていくかもしませんので、そういったスキルを磨いておくことも今後の生存戦略として悪くないでしょう)。
そういうわけで、まずは「圧倒的な作業スピードで仕事を終わらせる」ことで差別化する、というのを意識してみると良いのではないでしょうか?
そんなに差がつくだろうか?という疑問もあるかと思います、私もそうでした。
ただそれは、普段、人の作業を見ることが誰しもあまりないからだと思います。
実感として、間違いなく「スピード」は差別化できる武器になります。
最後に
スピードを追い求めるあまり、クオリティが失われても良いという話ではもちろんありません。
ですが、例えば1週間かけて100%のクオリティに仕上げるよりも、1日で80%のクオリティで仕上げる方が、感動して頂き、価値をできるのは間違いありません。
芸術性で勝負するような場合には逆になるかもしれませんが、日々、締め切りの中で生きているビジネスマンとはえてしてそういうものです。
仕事がを早く仕上げることもできれば自分の時間を確保し、自己投資に充てることも容易になるでしょう。
win-winの関係を築くためにも、これを機に改めて「スピード」を意識してみてはいかがでしょうか。
※無印良品@銀座 店内ディスプレイ(本文とは関係ない)
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。