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性別による賃金差異の開示事例

性別による賃金差異の開示事例

経営財務「男女の賃金差異 有報で説明する事例」

今週の経営財務(No,3570 2022.9/5)に「男女の賃金差異 有報で説明する事例」という記事が掲載されています。

今後、多くの企業で開示が行われることになりますが、先立って開示を行なっている企業が紹介されています。上誌では「株式会社コメリ」の事例が掲載されていますが、ここでは名前だけが上がっていた「株式会社SUBARU」の事例を取り上げてみたいと思います。

 

株式会社SUBARUの開示

こちらは、「株式会社SUBARU」の2022年3月期の有価証券報告書の【従業員の状況】です。

男女の差は・・・

大企業を中心に、かつてよりも女性の活躍が進み始めていると思っていましたが、従業員数にはまだまだこれだけの差があるのが驚きです。

平均年齢や平均勤続年数には大きな差はないようです。平均年間給与に関しては、130万円ほど差があり、これを大きいととるか小さいととるかは各々異なるところかと思いますが、平均年齢や平均勤続年数を要因とする差としては少し大きいような気もします。

 

理由の記載なし

もう少し踏み込んでみます。

従業員数の合計は16,961人であり、そのうち5,519人は臨時雇用者(期間従業員、アルバイト、パートタイマー等々)となっています。各セグメントの従業員数においても括弧書きで臨時雇用者数は記載されていますが、男女別の雇用者数においては、臨時雇用者数の記載がありません。

これをどのように見るかですが、ほぼ間違いなく女性の臨時雇用者の方が男性より多く、女性従業員のほとんどが臨時雇用者である可能性すらあります。

開示の拡充が義務化されると、不都合な数字の開示を控える傾向にありますが、こういった対応は見る側に疑念を抱かせ邪推されることに繋がりかねません。

そういった側面こそむしろ積極的に開示し、現状に対してどのような対応を図っていくのか、企業の姿勢を示す方が重要だと思われます。

 

その点、上述の「株式会社コメリ」では女性の平均年間給与が男性より低い理由を記載し、

「引き続き、性別にかかわらず様々な場面で女性の登用を行い、多様性の確保を図ってまいります」

と結んでおり、開示に対する姿勢の違いが見受けられます。

 

まとめ

これから性差に関する開示が進むにつれ、記載様式の幅も広がっていくことが想定されますので、好例をうまく取り入れつつ各々の状況を適切に投影した開示が望まれます。

同号の経営財務では、「女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について」というタイトルの記事が厚生労働省 雇用環境・均等局 雇用機会均等課名義で掲載されていますので、こちらも参考になるでしょう。

 



※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。 



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