【2021年改正】収益認識に関する会計基準の適用指針の改正ついて
収益認識に関する会計基準の適用指針の改正
2021年3月に収益認識に関する会計基準の適用指針が改正されました。
これは主に、かねてから議論となっていた電気事業及びガス事業における、いわゆる「検針日基準」をめぐる取扱いに関するものであり、今回の改正で該当事業の収益に関する見積もりについての指針が加えられました。
以下、詳細について確認したいと思います。
改正の背景について
改正内容の前に、まずはなぜ改正が行われたのかその背景を簡単に確認します。
検針日基準の取扱い
IFRS15号へのコンバージョンによる新収益認識では、従来の基準で見られたいわゆる検針日基準(※)による計上が認められなくなりました。
審議の結果、検針日基準による収益認識を認めた場合、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない(第164項参照)とは認められないと判断し、会計基準の定めどおり、決算月に実施した検針の日から決算日まあでに生じた収益を見積もることが必要であるとの結論にいたった。
企業会計基準適用指針第 30 号 176項-3
したがって、検針日から決算日までの収益を見積りによって計上する必要が生じることとなりますが、決算日時点での販売実績量が入手できない(実務上、決算日時点で検針は行われない)こと等により、事後的な検証ができないため、見積もりの適切性の評価をすることが難しいという問題点があります。
そこで、見積りの適切性の評価における財務諸表作成者及び監査人の負担軽減を考慮し、見積方法について財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲で代替的な取扱いが定められました。
※検針日基準について
検針日基準では、電気事業及びガス事業では、一般的に毎月、月末以外の日に実施する検針による顧客の使用量に基づき収益計上が行われるため、決算月に実施した検針の日から決算日までの収益を、翌期の収益として計上することとなる。
改正内容について
上述のとおり、電気事業及びガス事業において月末以外の日に実施する検針による顧客の使用量に基づき収益計上を行う場合、検針の日から決算日まで検針の日から決算日まで生じた収益を見積もる必要があります。
この時同種の契約をまとめたうえで使用量又は単価(あるいはその両方)を見積もるものと考えられます。
そこで、決算月の月初から月末までの総配量を基礎として、気温、曜日等を加味して見積もったうえで収益を計上する方法等が考えられますが、実務上は気温、曜日等を加味することは難しい可能性があるため、単純な日割り計算を行うことができることとなりました(実務指針103項-2、176項-4)。
また、契約の種類や使用量、時間帯等によって単価が変動する料金体系を採用している場合には、これらを考慮して見積りをお行うことが考えられますが、実務上はこれらを適切に調整することは難しい可能性があるため、決算月の前年同月の平均単価を基礎とすることが可能となりました(実務指針103項-2、176項-4)。
最後に
新収益認識基準により、検針日基準は認められなくなりましたが、ここまで簡素化した見積もり方法が認められるのであれば実務的には相当な負担が軽減されるものと思います。
また、特定の業界に対してのみ例外を認めることができない(と思われる)ことから、表向きとして検針日基準を認めることはできないとしていますが、このような見積り方法によって計算した結果は、おそらく検針日基準によってこれまで計上してきた収益水準と大きく異なることはないと思われます。
落ち着くべきところに落ち着いたという印象です。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。