会計のこと

固定資産の減損に関する実務

固定資産の減損の実務

固定資産の減損の実務

これまで監査をしてきた経験上、固定資産の減損に関する実務を会社が適切に行えている、と自信をもって言い切れる会社があまり多くないように思っています。

 

固定資産の減損は、会社の管理部門の能力、経営管理体制の重要性の認識レベルのバロメーター

管理部門の人員余裕や管理体制の重要性の認識具合によって如実に差が出るのが固定資産の減損に関する実務だったりします。

 

固定資産の減損プロセス

固定資産の減損は

①固定資産のグルーピング

②減損の兆候の把握

③減損損失の認識

④減損損失の測定

という流れで進んでいくわけですが、②の減損の兆候の把握が適切にできていない会社が多い印象です。ですが、ここをしっかり決算財務プロセスの一部として組み込んでおかないと、想定外の損失を計上するリスクにつながる恐れがあります。そこまで加重な負担にはならないはずですのでしっかり検討しておきましょう。

 

減損の兆候の事象の例示

①資産または資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益またはキャッシュフローが継続して赤字となっているか、あるいは、継続して赤字となる見込みであること

②資産または資産グループの使用されている範囲または方法について、当該資産または資産グループの回収可能価額を著しく低下させるような変化が生じたか、あるいは生ずる見込みであること

③資産または資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したかまたは悪化する見込みであること

④資産または資産グループの市場価格の下落 

固定資産の減損の兆候を検討する場合には上記4項目の視点から行うのが実務上一般的であり、監査上も同様の視点で通常は検証が行われます。①~③についてはチェックリスト化して四半期ごとに検証を行いましょう(減損の処理は減損の事実があった時に認識し、測定、処理される必要があります)。④については、時価が把握できる不動産について一覧し、公示価格や路線価、鑑定価格をもって時価と簿価の比較を行い該当するものがないか確認しましょう。原則として、時価が簿価50%を下回ると減損の兆候に該当します。

 

①資産または資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益またはキャッシュフローが継続して赤字となっているか、あるいは、継続して赤字となる見込みであること

これは最もわかりやすいかと思いますが、2期連続して営業赤字になった時や2期連続して営業赤字になる可能性が高い時が該当します。私の経験上ですが、キャッシュフローで判定している会社は見たことがありませんし、損益で判定するのが一般的となっています。キャッシュフローで判定することもできますが、今期はキャッシュフローで判定、来期は損益で判定、というようなことは継続性の観点で認められませんので注意しましょう。

 

②資産または資産グループの使用されている範囲または方法について、当該資産または資産グループの回収可能価額を著しく低下させるような変化が生じたか、あるいは生ずる見込みであること

例えば自社で利用していたビルを賃貸用に切り替える時や、事業用に供していた資産が遊休資産になる場合、事業の廃止などが該当します。各事業の概要についてタイムリーに把握していないと認識できない可能性もあるので、こういった事象が減損の兆候に該当するということを前もって認識しておくことが重要です。

 

③資産または資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したかまたは悪化する見込みであること

こちらについては以下のように例示されており、判断が難しいものが多いので社内で十分に検討し、判断が難しいものについては監査法人等の専門家に相談するのがいいでしょう。以下に該当するような場合には、上記の①や②に該当する場合が多いと考えられますので、当該項目だけで減損の兆候ありと判断されるケースは珍しいかもしれません。

市場環境の著しい悪化:材料価格の高騰、製・商品店頭価格やサービス料金、賃料水準の大幅な下落、製・商品販売量の著しい減
少などが続いている場合
技術的環境の著しい悪化:技術革新による著しい陳腐化や特許期間の終了による重要な関連技術の拡散など
法律的環境の著しい悪化:重要な法律改正、規制緩和や規制強化、重大な法令違反の発生など

 

④資産または資産グループの市場価格の下落 

上述しましたが、簿価から少なくとも50%程度以上下落した場合に市場価格の著しい下落があると考え減損の兆候に該当します。不動産については、公示価格や路線価等で市場価格が把握しやすいですから、毎期適切に情報収集を行い検証しましょう。賃貸等不動産や遊休の不動産については、ここで兆候ありと判断されるとそのまま減損の認識・測定までいって損失が計上される可能性が高いです。

 

注意点

減損の兆候の判定についてみてきましたが、適切に兆候の判定を実施できているでしょうか?このプロセスを蔑ろにしてしまうと、期末を過ぎたあとに想定外の損失の計上漏れを監査法人から指摘されるリスクがあります。減損損失の計上額は数値的なインパクトも大きいですから、まだまだ業績も良いからまだまだ大丈夫と後回しにせず、しっかりと減損の兆候を把握できるプロセスを構築し、経営者層がタイムリーに問題を認識できる管理体制を整えましょう。チェックリストと不動産の時価・簿価比較はマストです!

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!

出張先にて@広島県

 

 

 

※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。                                                   

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矢野譲公認会計士・税理士
公認会計士・税理士。 2018年開業、現在はコンサルと税務。行動と継続が座右の銘。趣味は映画と読書と音楽と麻雀と靴と時計。独立会計士の成功モデルを模索・構築中。更新頻度が著しく低いブログ(http://yano-cpa.com)書いてます。NCC通学。
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