IAS23号 借入費用
IAS23号 借入費用について
IAS2号棚卸資産やIFRS16号などを読んでいると、取得原価の構成で日本基準との違いに気づく方もいるかと思います。
ずばり「借入費用(借入コスト)」です。
国際会計基準では日本基準と異なり、棚卸資産や固定資産に取得原価に「借入コスト」を算入する場合があるのです。
(日本では原則として即時費用化※特定の場合においてのみ資産化が容認)
それを規定しているのが「IAS23号 借入費用」です。
借入費用(借入コスト)とは
借入費用は、「企業の資金の借入に関連して発生する利息及びその他の費用」を言います。
したがって、借入に伴う利息だけでなくアレンジメントフィー等も対象になると考えられます。
なお、IAS23号ではその他の費用として、
IAS39号「金融商品―認識及び測定」に示されている実効金利法で計算した利息費用
IAS17号「リース」の定めに従って認識されるファイナンス・リースに関する財務費用
外貨建借入金から発生する為替差損益で,利息費用に対する修正とみなされる部分
を掲記しています。
対象となる費用
対象となる借入費用についてIAS23号は以下のように規定しています。
「適格資産の取得、建設又は製造に直接起因するものについては、当該資産の取得原価の一部として、借入費用を資産計上する必要がある」
では、適格資産とは何でしょうか。
適格資産とは
適格資産とは、
「意図した使用または販売が可能となるまでに、相当の期間を要する資産」
をいいます。
ここでも
棚卸資産
製造プラント
発電設備
無形資産
投資不動産
が例として示されています。
費用(コスト)の算定
借入費用(コスト)の算方法は、借入金と該当の適格資産の関連の有無により異なります。
関連性が特定できる場合
借入金と適格資産の関連性が特定できる場合、実際に発生するコストのそのまま資産化します。
ただし、1点注意が必要なのは借り入れた資金を一時的に貸し出しに回しそこから利息収入(投資収益)を得た場合には、当該借入コストから控除します。
関連性が特定できない場合
借入金と適格資産の関連性が特定できる場合とは、営業資金等の借り入れに伴うコストが取得原価に算入される場合ですが、このように直接紐付けることができない時には推定計算を行うことにより借入費用の一部を資産化します。
「資産化率」を用いて計算を行いますが、計算ロジックについてはなかなか複雑なため、ここでの詳細な記述は避けますが、日本公認会計士協会が公表している事例が非常に参考になりわかりやすいです。
実務上、これをやる必要が出てくるとかなりの手間になるため重要性等の切り口でなるべき簡便的な処理に済ませることが望まれますね。
一方で、簡便的な処理が難しい場合に人力で行うのはミスの原因にもなりますし、何よりかなりのリソースが必要になると思われるため、システム化する必要性が高いと思います。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。