のれん非償却化か・・・?
のれんの非償却化を議論
経営財務の2025年4/7 No.3698に「のれんの非償却化を議論」と題し、内閣府が日本プライベート・エクイティ協会やGMOインターネットグループ、ソラコムなどへ、のれんの会計処理や課題のヒアリングを行った、という記事があがっていました。
ここでまとめられているM&Aにおけるのれんの課題としては、下記があげられています。
時点 課題 M&A実行時 事業承継案件やベンチャー、グロース企業では純資産が過少となっているケースが多く、M&Aを実行すると多額ののれんが計上される。のれんの定期償却負担から、ファンドがM&Aを躊躇してしまう。 レバレッジローン借入時 M&A実行時の資金の一部について、金融機関からレバレッジローンとして提供を受けることが多い。のれんが大きいと外形上、営業利益が赤字になることもあり、ローンの提供を躊躇する金融機関がある。 上場 / 再上場時 のれん定期償却により外形上の営業利益や当期利益が目減りし、株価がつきにくいことから、証券会社からIFRS任意適用を要請されることがある。
ASBJにのれんの償却見直しを要請へ
また、T&Amasterの2025年5月12日号・№1073に「ASBJにのれんの償却見直しを要請へ」と題した記事が掲載されています。
上記の論点の他、下記の点が指摘されています。
他国の企業と買収先が競合した場合、のれんの償却負担を踏まえた価格設定をせざるを得ず、入札競争で競り負けるリスクが高いといった弊害などが指摘されている。現状の対応策としては、のれんの償却を回避するため、IFRSへ移行することが考えられるが、数億円の導入コストがかかるといった課題が指摘されている。
ここではより具体的な記載もあり、本格的にのれんの非償却化へ現実味を帯びているように感じられます。
内閣府では、スタートアップ5か年計画の終期である2027年度に結論・措置が実施されることを念頭に、企業会計基準委員会(ASBJ)がのれんの非償却化を検討するよう、財務会計基準機構の企業会計基準諮問会議(会計基準の検討テーマなどを審議する機関)に新規テーマの有無を照会する。
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内閣府では、スタートアップ5か年計画の終期である2027年度に結論・措置が実施されることを念頭に、企業会計基準委員会(ASBJ)がのれんの非償却化を検討するよう、財務会計基準機構の企業会計基準諮問会議(会計基準の検討テーマなどを審議する機関)に新規テーマの有無を照会する。短期的な措置としては、のれんの償却費の計上科目を現状の営業費用ではなく、営業外費用に表示区分の変更を求める。経常利益や純利益には影響は残るものの、営業利益の見栄えが改善され、M&A実行時のハードルは下がることになる。また、中期的な措置としては、のれんの定期償却を見直し、非償却化することを求める。
ここからは私見になりますが、大手企業については多くがIFRSを導入しておりのれん償却の有無での影響はかなり限定的かと思われます。一方、ベンチャー企業を中心としたこれから大きく成長していく余地のある企業では、のれん償却が営業利益算定においては大きな負担になること、また国内マーケットをメインターゲットとしているベンチャーにIFRS導入はハードルが高いように思われます。したがってのれんの非償却化は一定の合理性はありますし、ベンチャーやスタートアップの成長を加速させる1つの因子として影響をもたらす可能性は小さくないと思われます。
今回の動向をみると、のれんの非償却化はそれなりに現実味がありそうですので、今後の動向も注視したいところです。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。