のれんの償却に関する各基準の動向と方向性
のれんの償却にまつわる議論は断続的に見聞きしますので、「あれ?結局今どうなってるんだっけ?」となりやすいので、ここで現状について整理したいと思います。ここでは日本国内において影響の大きい、日本基準、IFRS、米国基準の3つを対象とします。
のれんの償却について
3つの基準の中でのれんの償却を実施しているのは、現状、日本基準だけとなっています。日本基準は「のれんの償却+減損テスト」という立て付けです。
一方IFRSと米国基準は、現状、「のれんの償却」は行わず、最低年一回の「減損テスト」を実施するのみとなっています。
米国基準では、非上場会社についてはのれんを10年で定額償却する処理を任意で選択可能
IFRSと米国基準ののれんの償却に関する方向性
さて、上述の通りIFRSと米国基準においては「のれんの償却」は行われていませんが、これに関してかねてより「のれんの償却」の要否が議論の的となっています。いわゆる「too little,too late」問題に対する議論で、のれんの費用化が少額過ぎ、遅過ぎ、ということを指しています。
これに対しIFRSについては、IASBにおいて2020年頃からのれんの償却年数の見積りに関して信頼性をもって見積もることが可能か否かや、「のれんの償却」を再導入した場合の影響を含め包括的な見直しが議論されています。
一方、米国基準については2020年12月に「のれんの償却」が暫定決定されおり、現在は償却期間や減損テストとの兼ね合い等を含めた議論が行われています。
これを簡単にまとめるとこのようになります。
日本基準 | IFRS | 米国基準 | |
【現在】のれんの償却 | ○ | × | × |
のれん償却に関する 今後の方向性 |
○ | ? | ○ |
米国基準において「のれんの償却」が実際にいつから開始されるのかは現状わかりかねますが、日本基準と米国基準の方向性は一致することとなります。一方、IFRSに関しては「のれんの償却」を実施するかどうかを含めた議論が行われている只中ということで、日本基準、米国基準と足並みを揃えてくるのかどうか、注視したいところといった状況となります。
過去の資料ですが、ASBディスカッションペーパー「企業結合-開示、のれん及び減損」へのコメント(←リンク)として、経団連のHPの記載もこの話題の理解に資すると思います。参考までに。
————————————————-≪追記≫—————————————————————–
その後の動きについてはこちらの記事をご参照ください。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。