税制改正とグローバル・ミニマム課税
週刊経営財務のNo.3589にて、「グローバル・ミニマム課税対応で税効果会計の特例を設定へ」という記事があがっています。
今回、2023年の税制改正において、このグローバル・ミニマム課税に対応する法人税制の改正が行われる予定ですが、税効果会計に関する対応については注意が必要です。
グローバル・ミニマム課税とは
グローバル・ミニマム課税とは、タックスヘイブンへの利益移転などによる租税回避行為を防ぐため、軽課税国にある子会社等の税負担が最低税率(15%)に至るまで親会社等の国で課税する仕組みです。GAFAのようなデジタル取引を主とする企業の進展によって、市場国
上が発生しているにも関わらず、物理的拠点がないこと等を理由に現地で納税が行われていない、といったニュースを度々見聞することもありますが、これもその要因の1つです。
グローバル・ミニマム課税は、直前の4事業年度のうち、2以上の事業年度において、総収入金額が7億5,000万ユーロ相当(2023年1月為替レート換算で約1,000億円)以上の多国籍企業グループ等が対象とされています。
税制改正スケジュール
当該改正を含む税制改正大綱が2022年12月に公表されましたが、通常、1月に改正法案が作成され、2月に国会に提出されます。そこから衆議院と参議院で審議と採択が行われ、3月に可決・成立して公布されます。
グローバル・ミニマム課税に対応する税効果会計
税制改正大綱においては、グローバル・ミニマム課税制度の適用は 2024年4月1日以後開始する事業年度からとされていますが、グローバル・ミニマム課税が適用される企業においては通常、税効果会計の対応することが考えられます。
「税効果会計に係る会計基準に適用方針」第44項に従い、繰延税金資産および繰延税金負債の額は、決算日において国会で成立している税法に規定されている方法で計算する必要がある。
一方で、下記を理由としてグローバル・ミニマム課税に基づいた税効果会計の対応の必要性と難しさが言及されています。
・グローバル・ミニマム課税制度においては、課税の源泉となる利益が生じる企業と、納税義務が生じる企業が相違すること
・企業グループを構成する事業体等についてその国ごとに所得と対象税額を集計する必要があり、当該所得と対象税額それぞれにおいて調整計算が求められているなど、複雑で実務上負担のある税制と考えられること
グローバル・ミニマム課税対応の税効果会計の特例
そこで、グローバル・ミニマム課税制度を前提とした税効果会計の適用は、実務上の対応が困難と考えられるため、税効果適用指針第 44 項の定めにかかわらず、改正前の税法の規定に基づくとする、特例的な取扱いを定めることが提案されています。
これは上記を鑑みるとこれは決定が既定路線ですが、「任意適用」となるか「強制適用」となるかはまだ未定のようです。
今後、2月に公開草案が公表され意見募集期間を挟み3月末までに実務対応方向が公表される予定です。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。