公認会計士登録の実務要件が2年間から3年間に・・・?
2022年1月4日に、金融審議会公認会計士制度部会の報告が公表されました。
そこでの議論の1つに、公認会計士登録申請までの実務要件を2年以上とする現在の規定から、3年以上とすべきである、という記述があります。
その要因として、国際教育基準において実務経験の習得を図る方法として3年間の実務要件が良いとされているほか、欧州のイギリス、ドイツ等の国では実務要件が3年以上とされていることがあがっています。
以下、金融審議会「公認会計士制度部会」報告の一部抜粋。
現行の公認会計士法上、公認会計士となる資格を得るためには、公認会計士試験への合格及び実務補習の修了のほか、2年以上の実務経験(業務補助・実務従事)を有することが求められている。高品質な会計監査を実施するためには、監査に関わる制度や基準の内容の理解に加えて、それを監査の現場で運用・適用する能力も求められるところ、実務経験は、そうした能力を磨くための重要な機会となっている。こうした中、実務経験の期間については、①企業活動のグローバル化や業務内容の複雑化・専門化が進み、監査基準も高度化する中、監査の現場でこれに対応できる能力を養う観点から、実務経験を通じて学ぶ知見の重要性が高まっている。②国際的に見ると、職業会計士志望者向けの初期専門能力開発を定める国際教育基準(IES)第5号では、3年の実務経験を求めることを例示しており、欧州の各国では、3年以上の実務経験要件が設けられている。これらを踏まえ、公認会計士の資格要件である実務経験の期間について、現行の「2年以上」を「3年以上」と見直すこととすべきである。
これだけ見れば確かに公認会計士登録の実務要件を3年間とすることに一定の妥当性はあるようにも思えますが、現状、2年間としていることで大きな問題がないのであれば不用意に変更する必要がないのではないか、と感じます。
これは実質的に「公認会計士登録をするためには監査業務を3年間やれ」といっているようなもの(絶対ではないが)で、公認会計士に求められる役割が拡大している昨今において、キャリアプランを狭めるような改訂はすべきでないと思います。
ある意味、監査法人におけるスタッフの流出には多少はどめになるとも考えられるので、そういった魂胆があるのでは・・・と勘繰るのは行き過ぎかもしれませんが、とかく締め付けるばかりの改正はゆくゆく公認会計士の魅力を削ぎ、なり手の不足を招きかねいでしょう。
ちなみに、上記の内容は「能力向上に向けた環境整備」のための一要素として報告されていますが、これが能力向上に向けた環境整備になるのかは疑問ですが、最近話題になったCPEの不正や大企業の粉飾等を看過したとみる向きがあり、世間一般へのパフォーマンス的な側面もありそうです。
そもそも審議会メンバーに学者や企業役員等が多いので、公認会計士業界への締め付け、よく言えば叱咤激励といったところでしょうか。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。