会計のこと

気候変動・非財務情報の開示と日本の位置付け

気候変動・非財務情報の開示と日本の位置付け

「気候変動に関する企業の取組みを聴取」

経営財務No.3547にて、「気候変動に関する企業の取組みを聴取」という記事が掲載されています。

記事内では関係者の発言として下記の文言があります。

「欧州型の”その産業がグリーンか否か”の二項対立では、これまでの日本企業の取組みは評価されない恐れがある。気候変動開示に関する日本基準はそのような観点から、日本企業の技術力の蓄積が評価される仕組みとするべき」

「日本の独自性が担保されるような基準でなくてはならないと思うが、関係省庁はその点をどう考えているのか」

「国際的な基準である以上は、アメリカなど一部の国の企業だけに有利なものであってはならず、ある程度一般化されたものでなれければならない」

 

ここで少し気になった点について所感として残しておきたいと思います。

日本のエネルギー環境とグリーン政策

日本の場合、エネルギーの自給率は2018年時点で11.8%と著しく低い状況にある一方で、電力の発電方法として70~80%を火力発電で担っている状況にあります。

ただでさえエネルギー資源に恵まれていない日本において、石油から電気へと移行する大転換機の中、結局火力による発電に大きく依拠しているのが現状です。

このような状況下で各国の独自性を考慮しないまま非財務情報の開示が制度化されると、日本の経済にとって著しく不利な影響をもたらしかねません。繰り返しになりますが、エネルギー資源に乏しく、国土も大きくない日本においてはエネルギー調達の方法には限りがあるからです。

そうなれば当然、日本のエネルギー政策にも影響があるわけですが、その場合の日本のエネルギー調達費用はさらに高騰し、日本経済へのさらなる悪影響が顕在化しそうです。

さらに、日本の独自性が考慮されないままグリーン化に舵を目一杯切った場合、日本はより他国のエネルギーに依拠しなければならない可能性がありますが、ウクライナとロシアの状況を知って、今後の日本が何らかの理由によりエネルギー調達に大幅な制限が加えられた場合、壊滅的な状況に追い込まれるとも限りません。

政治的な要因によって日本経済が影響を受けるのは好ましくない状況だと思いますが、ロシアのような国家が隣国である状況を鑑みても、無策でいるのは望ましくないでしょう。

ここで記載したことは掲題に関するほんの一側面でしかないですが、決して無視できないものではないでしょうか。

過去の経営財務の記事にあったように、サステナビリティ基準審議会(ISSB)へ、日本としての意見の発信や人材登用・派遣などを積極的に行っていく必要がある、というのも、このような観点から考えると理解しやすく、頷けます。



※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。 



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