会計のこと

重要性の原則とは

重要性の原則と働き方改革

昨今のトレンドである働き方改革にも触れながら重要性の原則を説明したいと思います。

 

重要性の原則とは

重要性の原則とは、

 

企業会計の目的は企業の財政状態、経営成績に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるため、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理に寄らないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる
企業会計原則注解(注1)

 

と言う、一般原則に準ずる重要な原則のことをいいます。ちなみに企業会計原則の一般原則は下記の7つです。

 

企業会計原則 一般原則
1. 真実性の原則
2. 正規の簿記の原則
3. 資本取引・損益取引区分の原則
4. 明瞭性の原則
5. 継続性の原則
6. 保守主義の原則
7. 単一性の原則

 

重要性の原則は企業会計原則の一般原則には含まれませんが、一般原則と同様、非常に重要な原則として認識されています。

 

ちなみに、重要性とは量、すなわち金額的なものだけでなく質的な面も考慮する必要があります。したがって金額が小さいければすべて簡便的な処理が行えると言うものではありません。形式と実質の両面から判断する事が求められます。

 

企業会計原則注解では、重要性の原則の適用対象として5つの項目が例示列挙されています。当然これらは例示列挙なので基本的にあらゆる会計事象に対して重要性の原則は適用可能です。
四半期財務諸表における簡便的な取り扱い(*1)や、退職給付会計の簡便的な処理(従業員300人以下の中小企業を対象)(*2)などはこの重要性の原則に基づいて認められた会計処理と言えるでしょう。

 

*1
一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理、 減価償却費の算定における簡便的な会計処理:定率法を採用している場合、 年度決算と同様の方法による税金費用の計算における簡便的な取扱い
等、詳細は 企業会計基準適用指針第 14 号 四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針を参照。

 

*2
小規模企業等における簡便法
詳細は 企業会計基準適用指針第 25 号 退職給付に関する会計基準の適用指針を参照。

 

働き方改革と業務の効率化

ここで少し話はそれますが、昨今働き方改革と業務の効率化が叫ばれています。そこで各社経理部では、月次や年次決算の対応と、働き方改革への対応を天秤にかけながら業務を行わなければならない状況にあるところも多いのではないかと考えられます。

 

経理部における業務効率化の切り口はいくつもあり、その会社毎に適切なものを選択する必要がありますが、上記の重要性の原則を上手に取り入れていくこともその1つになると考えられます。
実質的に何かが効率化されるわけではありませんが、何かを効率化するためには絶対的に時間が必要です。一定の時間の余裕を確保するための一歩として検討してみる価値はあるでしょう。

企業会計の目的は…

企業会計の目的は主に2つ、外部から企業の財政状態経営成績を判断すること(財務会計)、内部のマネージメントのため意思決定のため(管理会計)に、の2つが挙げられます。

 

そして上記の通り、それらの判断や意思決定を誤らせない範囲の中で重要性の原則を適用した会計処理を行う事は認められています。

 

したがって過度に厳密な会計処理を行い、疲弊、消耗してしまっている会社あるいはその可能性がある会社は一度重要性の原則に照らして簡便的な会計処理を行うことができないか洗い出してみる価値があります。

 

経理部が長時間残業をしないでうまく回っている会社の特徴として、単純に潤沢な人員がいる場合が多いのも事実ですが、一方で長時間残業が常態化している会社としての特徴は必要以上に細かい実務処理をしている場合も少なくありません。これは会社全体としての傾向と、個人の資質による場合の2通りがありますが、いずれの場合にも適用の余地がないか検討してみるといいでしょう。
会計に限りませんが手段と目的を見失なわいように常に注意しましょう。どんなに注意しても注意しすぎという事はありません。

 

重要性の基準

その際、重要性の金額や判断基準を各々の会社に適したものとする必要があります。
特に監査が入る会社では事前に監査人に確認を取ることをおすすめします。
監査人側から明確な、あるいは具体的な金額や判断基準が示される事はあまり考えられませんが、会社側からの確認や相談等にはある程度の指針を共有してくれるものと思われます。

なお、念のため記載しておきますが、不正な会計処理やいい加減な会計処理を推奨するものではありません。業務の見直しのきっかけになれば幸いです。



※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。 



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