会計のこと

収益認識に関する会計基準

収益認識に関する会計基準

日本にはこれまで収益認識に関する個別に規定された具体的な会計基準はありませんでしたが、IFRSやUS GAAPのすべての業種・取引に適用する包括的で単一モデルに基づく新基準を受けて、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の基本的な原則を取り入れる形で若干日本向けにカスタマイズし、導入されることとなりました。

この平成30年4月1日以後始まる事業年度から早期適用が可能となっており、強制適用平成33年4月1日以後始まる事業年度からとなって。

過去にIFRSを任意適用した企業において、売上高が大幅に減少したケースがあったように、この新しい会計基準の適用により大きな影響を受ける企業が少なくありません。わかりやすいケースとして2つの事例・業種をご紹介します。

 

 

収益認識に関する基本原則

IFRS第15号による収益認識のプロセスは

ステップ1 契約の識別

ステップ2 履行義務の識別

ステップ3 取引価格の算定

ステップ4 履行義務に取引価格を配分

ステップ5 履行義務充足により収益を認識

の5つのステップに区分されることとなりました。これにより、売上計上に関する「単位」「金額」「タイミング」がこれまでと変更されるリスクが生じるわけです。

 

物品販売とサービスを提供している場合

わかりやすい事例として、これまで事務機器と2年間の保守サービスを一体として販売し、販売時(出荷時等)に全額の売上を計上していたケースでは、以下のようになると考えられます。

顧客との契約上は保守サービスが事務機器の購入に伴う無償のサービスとして販売していたとしても、無償期間をすぎればサービス料が発生するわけで、サービスそのものには一定の価値があると考えられるため、保守サービス分の売上は出荷時に売上計上することは認められず、その期間に渡って売上を計上します。

売上高合計が20,000円の場合、以下のように売上の計上時期が変更となります。このケースでは、ステップ2の履行義務の識別で事務機器の販売と保守サービスの提供をそれぞれ別の履行義務として認識しているわけです。ステップ4にて、それぞれに売上価格を按分しますが、基本的に価格配分はそれぞれの独立販売価格によって按分します。そして、ステップ5にて事務機器の販売は出荷時点、保守サービスは2年間にわたって履行義務が充足されると考えられるため、後者については期間按分が求められます。

適用前 20×1年 20×2年
事務機器 20,000 0
保守サービス 0 0
適用後 20×1年 20×2年
事務機器 15,000 0
保守サービス 2,500 2,500

 

HONDAの場合

日本国内においてIFRSを任意適用している本田技研工業株式会社の2017年3月31日期の有価証券報告書の注記を見ると、適用は2019年3月31日期の決算から適用開始のようですが、検討事項として

 

当社および連結子会社における顧客との契約には、無料の車両点検等の無償で財またはサービスを移転する約束が含まれています。当該約束が履行義務として取り扱われる場合、現在より売上収益の認識が繰り延べられる可能性があります。また、販売店に対する奨励金の認識及び測定に影響を与える可能性があります。上記の影響を含め、当社および連結子会社は連結財務諸表に与える影響を適用開始日まで引き続き検討しています。

との記載があります。繰り延べられる可能性があります、との表記にとどまっておりますが、今後どのように判断し、どれほどの金額的影響があるのか注目されるところです。

 

代理人と判定されるケース

収益認識に関する会計基準の導入により、これまでの日本基準では総額表示で計上していた売上高が、その企業が代理人として判定されるケースでは純額表示による計上となり、大幅な売上高減少となる会社が想定されます。本人か代理人かの判定については、・企業が財又はサービスを提供する約束の履行に対して主たる責任を有していること、・企業が在庫リスクを有していること、・企業が財又はサービスの価格設定について裁量権を有していること等があげられています。

10,000円で商品を仕入れ(預かって)10,000円で販売し、販売したことによる手数料収入として4,000円を売上計上していた場合、以下のようになります。

適用前 売上高 14,000
売上原価 10,000
売上総利益 4,000
適用後 売上高 4,000
売上原価 0
売上総利益 4,000

ここまでシンプルなケースはなかなかないでしょうが、某商社がIFRSを任意適用した際に代理人取引として売上計上の方法を変更したケースでは売上高が50~60%程度減少しました。金額的な影響が大きく、また本人か代理人かの判定は慎重を要する判断になると想定されます。また販売する商品のすべてが本人、あるいは、代理人という0か100かということは実務上考えづらく、一般的に扱う商品や取引先毎に販売・仕入形態が異なるため、契約内容を洗いなおすことも必要に応じて行う可能性もあるでしょう。

 

 

まとめ

このように、売上の表示額だけを見ても影響が大きいわけですが、「単位」「金額」「タイミング」が変わることで、予算策定の方法や意思決定プロセス、売上管理に関する内部統制等、あらゆる管理業務への影響が生じる可能性があるため、早い段階での取り組みが求められます。上述した事例以外にも検討を要する業種・業態は多いものと考えられますので、慎重な検討が必要です。



※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。 



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