【収益認識基準】履行義務の識別
収益認識基準では、以下の5ステップに従って収益認識を行います。
ステップ1 契約の識別
ステップ2 履行義務の識別
ステップ3 取引価格の算定
ステップ4 履行義務に取引価格を配分
ステップ5 履行義務充足による収益の認識
今回は、ステップ2の「履行義務の識別」についてまとめます。
履行義務の識別とは
まず「履行義務の識別」の定義から確認します。
企業会計基準第29号収益認識に関するする会計基準には
契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、次の(1)又は(2)のいずれかを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別する(第 7 項参照)。
(1) 別個の財又はサービス(第 34 項参照)(あるいは別個の財又はサービスの束)
(2) 一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり、顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス)(第 33 項参照)
企業会計基準第 29 号 第32項
と記されています。
要は、財かサービスを顧客に提供する約束を履行義務と言いますが、ここでは財とサービスの提供パターンが3種類あることを押さえておきましょう。
この3パターンを図解するとこのようなイメージです。
パターン① 別個の財又はサービス
財又はサービスが単独で顧客が便益を享受することができ、他の約束と区分して識別できる場合には、「別個の財又はサービス」として考えます。
パターン② 財又はサービスの束
別個の財又はサービスとは言えないもの、すなわち、2つ以上のものが組み合わさって初めて顧客が便益を享受することができる場合には、「財又はサービスの束」として考えます。
例えば、銀行口座を開設し、システム上、口座を作ったとしても、キャッシュカードや通帳を顧客に受け渡さなければ、顧客はその財又はサービスを使用することができません。
こういった場合には、「口座の作成」と「カードや通帳の受け渡し」を1つの財又はサービスの束として考えます。
パターン③ 一連の財又はサービス
財又はサービスが一定の期間にわたって提供され、その進捗が同一の方法で見積もることができる場合には、「一連の財又はサービス」として考えます。
例えば、定期購読で配達される新聞等がこれに該当します。
一か月分を31個の約束として考えるのではなく、1カ月分を「一連の財」として認識します。
最後に
ステップ①で識別した契約毎に履行義務を識別していくことになりますが、各契約の中で当該企業が、売り上げを計上するために「何をしなければいけないのか」を認識・把握する作業が「履行義務の識別」と言えるでしょう。
収益を認識するためには、履行義務を充足しなければならないので、適切に「履行義務を認識」することが大切になります。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。