資金決済法上の電子決済手段とは
ここ最近の会計関連誌を見ると、「資金決済法 第〇号電子決済手段」といった文言が掲載された記事がたびたび散見されます。
しかしながら、それが具体的に何を対象とした基準なのかがわかりづらいため、資金決済法とは?電子決済手段とは?何なのか、整理したいと思います。
資金決済法とは
そもそも資金決済法とは、顧客資産の保全やマネーロンダリングへの対策等を意図したもので、wikipediaによると
資金決済に関する法律(しきんけっさいにかんするほうりつ、平成21年6月24日法律第59号)は、商品券やプリペイドカードなどの金券(電磁化された電子マネーを含む)による前払式支払手段、銀行業以外による資金移動業、暗号資産(いわゆる仮想通貨)の交換、並びに資金清算業について規定する日本の法律。略称は資金決済法。
とあります。平成21年は2009年ですので、できてから間もない法律と言えます。
対象となるのは主に、
①商品券やプリペイドカードなどの金券(電磁化された電子マネーを含む)による前払式支払手段
②銀行業以外による資金移動業
③暗号資産(いわゆる仮想通貨)の交換
④資金清算業
であることがわかります。
資金移動業とは
②の資金移動業と言うとあまりピンときませんが、資金移動業者として登録されている有名企業には、PayPay株式会社や楽天Edy株式会社、株式会社メルペイ、株式会社ジェーシービー等があります。
暗号資産交換業とは
③の暗号資産交換業は
・暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換(第1号)
・前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理(第2号)
・その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は暗号資産の管理をすること。(第3号)
のいずれかを業として行うことと定義されており、テレビCMでも放映されている株式会社bitFlyerやGMOコイン株式会社、最近破綻したことでも知られるFTXの日本法人であるFTX Japan株式会社等が該当します。
資金清算業とは
④の資金清算業は
資金清算業とは、為替取引に係る債権債務関係の清算のため、銀行等の間で生じた為替取引に基づく債務を負担することを業として行うこと
であり、資金清算業者として登録されているのは一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークの1社のみです。
では、続いて電子決済手段について見ていきましょう。
第〇号電子決済手段
上述したように第〇号電子決済手段という言葉が昨今、会計誌やニュース等で登場していますが、これは今年2022年に改正された資金決済法において定義されました(2022年12月現在、未施行)。
改正資金決済法第2条5項に以下のように記載されています。
この法律において「電子決済手段」とは、次に掲げるものをいう。
一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されている通貨建資産に限り、有価証券、電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権、第三条第一項に規定する前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるもの(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(第三号に掲げるものに該当するものを除く。)
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(次号に掲げるものに該当するものを除く。)
三 特定信託受益権
四 前三号に掲げるものに準ずるものとして内閣府令で定めるもの
紙面等で見かける第〇号電子決済手段、というのは、この改正資金決済法第2条5項1号~4号のことを言います。
中でも重要なのは上記の1号で、こちらも昨今良く見聞きするステーブルコインを想定していると思われます。
ステーブルコインには、一般的に「デジタルマネー類似型」と「暗号資産型」があり、この第1号電子決済手段に該当するのは前者で、後者はこれまでの資金決済法の「暗号資産(いわゆる仮想通貨)の交換」の対象となります。
暗号資産に詳しい方はご存知かもしれませんが、「デジタルマネー類似型」ステーブルコインは日本では現在流通しておらず、海外で有名なもので言うと「テザー(USDT)」が該当します。これは原則として米ドルに連動したステーブルコインで、日本においても改正資金決済法が施行されれば同様のコインが発行されるかもしれません。
ステーブルコイン(Stable Coin)とは、その価格が暗号通貨、法定通貨、または市場で取引されるコモディティなどと連動するよう設計されている暗号資産。
電子決済手段に関する会計基準について
電子決済手段に関する会計基準については現在ASBJが開発に着手しており、目下進められています。
当ブログでも引き続き注視し、まとめていきたいと思います。
※なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、いずれの団体等の見解を代表するものではありません。